藤原氏の正体 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2008年11月27日発売)
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奈良時代から平安時代にかけて、日本を事実上支配していた藤原一族。その支配の方法は親戚関係を結んだ天皇を影で操ることだ。また、ライバルとなった貴族を政治的策略で次々と排除する。その代表例が長屋王、菅原道真。さらに、日本の歴史を一族の都合のいいように作り変え、日本書紀を編集する。

こうしたことから藤原氏は日本史においてヒール的存在として扱われてもよさそうだが、なぜか彼らの印象は悪くない。それどころか、一族は現代まで近衛家や一条家と名を変えて皇室に近い立場にいる。

なぜ藤原氏は非難されることがないのか。その大きな理由に大化の改新での中臣鎌足の活躍がある。極悪人の蘇我氏を葬り、現代まで続く天皇家を救い出した正義の味方である鎌足を祖とする一族というイメージが藤原氏にはある。

しかし、不思議なことに中臣鎌足の若い頃の履歴はよくわかっていない。日本書紀によって天皇は神の子孫であり、蘇我氏の功績を否定する歴史を創造した藤原氏だが、なぜか鎌足の過去についてふれていない。著者はその矛盾を研究し、結論として、中臣鎌足は朝鮮人の王族であったと説く。

その他、様々な藤原氏の政略、統治を著者は解説する。藤原氏の権力の源泉は歴史の重要性に気がつき、それを創造したことだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史モノ
感想投稿日 : 2020年9月10日
読了日 : 2020年9月10日
本棚登録日 : 2020年9月10日

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