歴史に観る日本の行く末: 予言されていた現実

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  • 青春出版社 (1999年2月1日発売)
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 本書のタイトルからは日本の将来予測に関するものと思われるかもしれないが、小室氏の他の著作に従って「~原論」と改めるならば、本書は「教育原論」とするのが最もふさわしいだろう。
 2015年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の舞台となっている松下村塾。この塾を開き、多くの維新の志士達を育成した吉田松陰の教育を見直すべきと著者は言う。
 確かに小室氏の指摘するように、現代の日本の社会が抱える諸問題の根底には「アノミー(規範の欠如がもたらす社会的混乱)」が横たわっているように思われる。そして、教育改革の必要性も理解できる。ただし、その方向性が家庭内での父親の権威復活と言われると、やや結論を急ぎ過ぎているような感もある。
 1932年生まれの小室氏の視点から見れば、おそらくそれが現実的な解に見えるのであろうが、時代も人の価値観も戦前のそれとは変わり過ぎている。小室氏の問題提起は真摯に受け止める価値はあるが、その対応策については現代に生きる我々が見い出さねばならない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2015年7月11日
読了日 : 2015年7月11日
本棚登録日 : 2015年7月11日

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