雨の塔 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2011年2月18日発売)
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感想 : 118
4

選ばれた資産家の娘達が
通うことが許されている女子大学。

着たい服も、
食事も、
なんでも手に入るが、
学区の外に出ること、
ニュースや情報は手に入らない。

隔離された女子寮。
そこに一人の女の子が入寮する。

均衡を保っていた世界が、
ほころび歪に崩れ
絡まっていたものがほどけて切れる。

「捨てられ」「逃げるように」「島流し」にあった娘たち。

愛人、妾、結婚するための道具として、
生を受けた彼女達。
少女と呼ぶには危うい年齢の19歳。

矢咲は大財閥の娘、
さくらと心中事件を起こし
情報や噂から逃げるように、この寮を訪れる。

そこで出会ったのは、ルームメイトの小津。
さくらに似ている三島。
三島の奴隷である都岡。
この4人だけの閉ざされた世界で物語は進みます。


「・・・・・・やめて やめて やめて やめて」

「触らないで 近寄らないで 微笑まないで 
 私を不安定にさせないで」

必要とする、スキになる、そこで抱く絶望。

仲が良かったからこそ、
信じていたからこそ、
ゼッタイの存在だったからこそ、
一番近くにいるからこそ、
支配したくて手に入れたくて、
欲しいと思ったからこそ、
じれったくて悔しい。

愛しいからこそ、憎い。

「誰かの心の中で一番必要になるのは、
 どうしてこんなにも困難なのだろうか。」

どんどん物語が進むにつれ、
イライラした三島はきっと私に似てる。
一番感情的でストレートでどうしようもない。
だけど、矢咲はずるい。
わかってたはずなのに、もう背負うことはしないって。
それなら最後まで貫いて欲しかった。
抗うと決めたのなら、最後までちゃんとフォローしてよ。

そこが19歳なのでしょうか。
捨てることも、逃げることも、結局出来ない。うーむ。

女性の肋骨を鳥かごと、
発せられるのは鳥の鳴き声と描けるこの方。素敵でした。

だけど、
どこまでも第三者として読んでしまいました。
それでもなんだかいろんな感情に翻弄される姿は愛しかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年8月16日
読了日 : 2011年2月20日
本棚登録日 : 2012年8月16日

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コメント 1件

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2012/09/06

鳩山郁子のファンなので購入しました、、、でも積読中です。
何だかな感じの話のようですが★4つですね。そろそろ読んでみようかな、、、

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