母性社会日本の病理 (講談社+α文庫)

著者 :
  • 講談社 (1997年9月19日発売)
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ユング心理学に基づいた母性原理と父性原理の説明と対人恐怖について書かれているところが面白い

母性→
グレートマザーと同じように慈しみ育てる肯定的な面と、全てを包み呑み込む否定的な面がある。どちらにおいても「我が子であれば全て良い子」といったような、ある「場」において何物も区別しない平等性を持つ。母性原理に基づく倫理観は「場」の中に存在するものの絶対的平等に価値を置き、場の平衡状態の維持に最も高い倫理性を与えるもの。これが「場の倫理」。あるがままで救われる→浄土真宗

父性→
切断するという機能にその特性が示される
主体・客体、善と悪などに分類し、人をその能力や個性に応じて類別する
規範によって人を鍛えようとし(守るか守らないかで分ける)、強いものを作り上げていく肯定的な面とその切断の力により破壊に至る否定的な面を持つ。これは母性と比較して「良い子だけが我が子」ということができる。父性原理に基づく倫理観は個人の欲求の充足、個人の成長に高い価値を与えるもの。これが「個の倫理」。選民の救済→キリスト教

対人恐怖
①日本においては場の倫理に基づく対人関係が主となるため、個を確立(自我の確立)の要求が無意識内で高まると、その傾向が場を破るものとして作用する。
②そもそも何らかの対立矛盾する二面性の存在が指摘されることもある。
・「自惚れたいが自惚れられない」ジレンマ
・没我的方向性と我執的方向性(これは前に書かれていることと合致する部分があって納得、それぞれが自他不在と自他分離の方向であるって考えれば①と同じようなこと言ってる)

最近では、母性的な場の倫理を重んじ、完璧な平等の場を求め、それが達成できないといなやそれを放棄するという人がちょくちょくいるのかなと思う。悪く言えば、自らが意識していることを外にも強要し、それが通じないと絶望して場に存在することを放棄するというような…
でも何となくこれはユングでいう自己実現の方向性に向かう補償作用な気もしていて、西洋的な自我の確立のために孤独へ向かうのは当たり前なのかなって思います(場を離れるというのは父性的っぽいし)。その後にどうなるのかって感じだけど…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年5月6日
読了日 : 2023年5月6日
本棚登録日 : 2023年5月6日

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