氷の感想を書いてこちらを忘れていたが、読んだのはアサイラム・ピースが先。これのほうがカヴァンの才能が純粋に表現されており、優れた本だと思う。
掌編というべき短い物語が積み重ねられる。奇妙な幻想世界だが、ファンタジー色はなく、強靭なリアリティと確かな筆力に支えられている。温度が低い異次元の世界に閉じ込められているのは「私」だ。銀髪の少女といった脚色を排したその「私」が陥っている閉塞感、不条理、悪夢は、作家が体験した精神の病とドラッグから生じた実感であろう。外界の抑圧者たちに恐怖と怒りを抱きつつ、逃れ救われることは諦め、無力に依存し続ける自分を客観的に受け入れている。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外
- 感想投稿日 : 2015年6月22日
- 読了日 : 2013年8月22日
- 本棚登録日 : 2015年6月22日
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