思想家ドラッカーを読む――リベラルと保守のあいだで

著者 :
  • NTT出版 (2018年2月24日発売)
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感想 : 8
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文字通りドラッカーとその周辺の専門家の「傍観者」としての仲正昌樹が書いた本書は「意味深い」。
これは「ちょっと売れた作家が、他の分野にちょっと足をいれてみたような軽いものではなく、「読解」という作業を通して見たドラッカー像というか、ドラッカーの思想を(少し哲学をかじってるような人にとって)わかりやすく伝えようとする試みが面白かった。

面白いというか、すごいなと率直に思ったのは、
「株式会社という・・「組織」が、諸個人の自由な取引の場である「市場」超えた秩序形成の役割を担っていることを強調し、その「前提」で組織の管理に重点をおく」(160ページ)
とあって、ここを読んだ時に、文章が持つ伝える力というのを最大限に駆使できる人っていいよな、と思った。ほんとのところは、読解する能力がケタ違いに高いから書けるんだろうから、そもそもそこからなんだろうけどさ。

客観的に他のドラッカー本と比べてしまうと、世間ではこの本は「異色のドラッカー本」という位置づけになるのだろうけど、自分としては、経営学に意図的に迷い込ん哲学者が「圧倒的な読解力と文章力」で描くドラッカーが「ビジネス系の本で描かれているドラッカー像」と比較して「異色」なのであって、そういう意味では異色だとは思うけど「異色のドラッカー本」というようには思えなかった。逆に『史上最強!明日から使えるドラッカー』とか、『自分を生かすドラッカー』とか、そういうのの方が違和感あるわ。というか異色すぎんだろ。
そういうのが多いのでマヒしてるから異色だとあまり感じないだけで、本当はビジネス書のドラッカーってかなり異色なんじゃないのかなと自分は思うし、そういった現状から見て意味深いと思う。

どっちにしろ、教養とか読解力とか、その辺のビジネス書の書き手と比べるとこんなに圧倒的な差があるのか、というのがよくわかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年3月13日
読了日 : 2018年3月13日
本棚登録日 : 2018年3月12日

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