ペスト (新潮文庫)

  • 新潮社 (1969年10月30日発売)
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「最も救いのない悪徳とは、自らすべてを知っていると信じ、そこで自ら人を殺す権利を認めるような無知の、悪徳にほかならぬものである。殺人者の魂は盲目なのであり、ありうるかぎりの明識なくしては、真の善良さも美しい愛も存在しない」

感情を抑制した語調。淡々としたオラン市での悲惨な災厄の描写。
外界との接触を遮断され、絶対的な力のなすがままに、可能性のない戦いを強いられた人々。
堅固な精神を持つ、医師リウーですら「際限なく続く敗北」と述べ、疲労と無感覚との中で終わりのない忍耐を続ける。

「ペストはすべての者から、恋愛と、さらに友情の能力さえも奪ってしまった。なぜなら愛は幾らかの未来を要求するものであり、しかもわれわれにとってはもはや刻々の瞬間しか存在しなかったからである」

背後にせまる恐怖、単調な毎日の繰り返しに、未来を描く能力を失わざるを得なかった人々は、放心した様相でよどんだ目を宙に泳がす。

人としての尊厳を脅かす、不条理と対面した時に示される、種々の人間の様相を、「神」「愛」「英雄主義」などの側面から描く長編。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年1月5日
読了日 : 2013年1月5日
本棚登録日 : 2013年1月5日

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