- Amazon.co.jp ・映画
- / ISBN・EAN: 4988105070745
感想・レビュー・書評
-
ANNA KARENINA
2012年 イギリス+アメリカ 129分
監督:ジョー・ライト
原作:レフ・トルストイ『アンナ・カレーニナ』
出演:キーラ・ナイトレイ/ジュード・ロウ/アーロン・テイラー・ジョンソン/ドーナル・グリーソン/アリシア・ヴィキャンデル/ケリー・マクドナルド/ラファエル・ペルソナ/カーラ・デルヴィーニュ/ミシェル・ドッカリー
19世紀、帝政ロシア。政府高官カレーニン(ジュード・ロウ)の妻アンナ(キーラ・ナイトレイ)は、可愛い息子と三人、ペテルブルクで幸福に暮らしている。あるとき、兄のスティーヴァ(マシュー・マクファディン)の浮気から起こった妻ドリー(ケリー・マクドナルド)との夫婦危機を仲裁するため、モスクワの兄宅へ赴いたアンナは、偶然出会った青年将校ヴロンスキー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と互いに一目で惹かれあう。
ドリーの妹キティ(アリシア・ヴィキャンデル)は、アンナが現れるまでヴロンスキーと良い雰囲気だったため、彼女を熱烈に愛している農場主のリョーヴィン(ドーナル・グリーソン)からのプロポーズを断ったが、アンナに夢中になったヴロンスキーには捨てられてしまう。アンナとヴロンスキーは互いの情熱を止められず、ついに愛人関係になるが…。
原作はもちろんトルストイの古典的名作。恥ずかしながらロシア文学はハードル高いので未読。しかし映画なら、小説で読むと難解なロシアの人名が最初から愛称に省略されているし、複雑な人間関係も、役者さんの顔で覚えれば把握しやすいので助かりました。舞台演劇っぽい演出は好き嫌い分かれそうだけど、個人的には、あの長編を2時間ちょいにまとめるために有効だったのではないかと。おかげで展開早いので退屈せずテンポよく見れました。
だがしかし。肝心のヒロイン、アンナにまったく共感できず、後半は「なんだこのくそビッチ」というアンナへの反感をこらえるのがもはや苦行。原作未読だからそこは原作も同じなのか判断難しいけど、演じているのがキーラ・ナイトレイなので、とにかく激情的、ヒステリックで気が強く自己中心。終盤もはやメンヘラの面倒くさい人で、何もかも自業自得としか思えず。
そもそも不倫ものに共感することがないのだけど、たとえば時代背景的に、男尊女卑、女性ばかり抑圧され、夫がモラハラで…等、彼女の恋を応援できる要素がもっとあればまだしも、そこの説明が不十分なのですよね。夫は仕事人間、18歳で結婚したアンナには燃えるような恋の経験がなかったのかもしれないが、それ自体は別に夫の落ち度ではない。カレーニンは大変寛大で、妻の不倫を薄々知りつつ、派手なスキャンダルにさえならなければ黙認するスタンス。
そこにつけこんで、アンナはやりたい放題。抑圧された女性の自立、自由の獲得、というようなテーマはそこには見いだせない。アンナは不倫の恋を隠そうともせず、堂々と密会、あげく妊娠して、夫に対して「私はもう彼の妻だから」と言い張る。夫は最初のうちこそ世間体を憚って離婚に同意しないが、アンナが自宅に愛人を連れ込むにおよび、ついにブチキレて離婚を言い渡す。当然でしょう。
しかしアンナは、途端に弱気になる。おりしも愛人の子供を出産、産褥で弱りきり、急に改心して夫に許しを請う。寛大な夫はアンナを許す。しかしアンナは、体調が回復して元気になった途端、やっぱり愛人が好きー!と暴走再開、夫を「家具」呼ばわりするなど、また非道の限りを尽くす。じゃあ離婚に同意してくれたときに別れとけよ。結局アンナは、子供たちを残して愛人と出奔。
しばらくは愛人とラブラブで楽しく過ごしているが、あれほど軽蔑していた社交界への未練が捨てられないアンナは、オペラを見に出かける。愛人のほうはさすがに立場を憚ってアンナを止めるが、アンナは聞かない。結果、貴婦人たちからは総スカンを喰らい、恥をかかされる。帰ってきたアンナの愛人への言い草は「どうして私が行くのを止めてくれなかったのよ!」いや止めたやん、止めたのに聞かへんかったのあんたやん…。
アンナの理論は、夫に対しても愛人に対しても万事この調子。自分が選んで愛人と出奔したくせに、息子の誕生日には会いにいきたいと我侭、可愛い息子にも娘にも簡単に会えない自分の悲劇的境遇を嘆いてみせるが、身から出た錆。そんなに子供が可愛いなら、愛人を諦めて家にいれば良いだけ。
このへんになるとさすがのブロンスキーもアンナに嫌気がさしているのではと同情。彼の母親と兄アレクサンダー(ラファエル・ペルソナ)は、弟を正道に戻すべく、ソロキナ公爵令嬢(カーラ・デルヴィーニュ)との見合いを密かに進めている。ヴロンスキーはそれでもアンナを愛しているというが、アンナは被害妄想から疑心暗鬼になり、ヒステリックに八つ当たり、完全にメンヘラ。そしてついに絶望した彼女は…。
アンナが破滅していくのと対照的に、ブロンスキーに振られたキティと、一度はキティに振られたリョーヴィンが上手くいって、二人が良い夫婦になるのは良かった。リョーヴィンの兄は娼婦を妻にし、帝政に批判的な問題児だが、キティは彼らのことも受け入れ献身的に義兄の看病をする。天使のようだ。まあこのへんは原作通りで、貴族ではなく農場主のリョーヴィンの生き方のほうに、時代も変化していったということだろう。
キャストは豪華だったし、キーラ・ナイトレイは美しかったけど、彼女が演じることでアンナがただ現代的な「ありのままの私」を主張するタイプの女性にしか見えなくなった気がして残念。アーロン・テイラー・ジョンソンも大変整った顔立ちだけど、お人形のようで、人間的魅力に欠ける。夫カレーニンを演じたジュード・ロウの若い頃なら、どれほど悪魔的魅力のある美青年として演じられたろうかと想像してしまった。
余談ながら、私は単純にアーロン・ジョンソンよりジュード・ロウがタイプなので、余計に夫を捨てて若い愛人に走るアンナの気持ちに共感できなかったのかもしれない。以前『紙の月』という日本の不倫映画でも、夫・田辺誠一を捨てて、若い愛人・池松壮亮のもとへ走る宮沢りえに全く共感できなかったことを思い出しました。だって池松壮亮より田辺誠一のほうがかっこいいもの(※個人の見解です)
『ダウントン・アビー』のメアリー=ミシェル・ドッカリーが、出番少ないながら、社交界で唯一アンナに味方してくれる貴婦人役で出演してました。ソロキナ嬢役カーラ・デルヴィーニュが、アンナを見上げて勝ち誇った笑みを見せる場面は『ヘルター・スケルター』で沢尻エリカの仕事をどんどん水原希子が奪ってくとこを彷彿。なんていうか、世代交代感。
貴婦人たちの華やかなドレスや、どうやって結ったの?という謎の髪型などは豪華絢爛、目の保養になり素敵でした。終盤、アンナが愛人と暮らしていた青い壁紙の部屋も斬新。そして、ドレスの下のペチコート?姿のアンナも前衛的だった。 -
絢爛の舞台美術が見たい!で見始めて大満足でした。劇中劇めいた捻りの効いた趣向は予想外のうれしい驚き。戯画的に上手に端折って無理やり感なく2時間に収めつつ、草刈りやリョーヴィンくんとキティの文字並べなど好きなシーンをきっちり拾ってくれていて嬉しかった
-
原作に比べると、だいぶ繊細さに欠けちゃってるなぁ・・・。全体的に登場人物の描き込みが薄くなっている気がしたのと、映像表現は素晴らしい部分もあるけど、少しやり過ぎな部分も感じた。言葉を映像に置き換えるって難しい時もあるんだろうなぁ。
-
将校がかっこいい。そしてアンナの崩れていく感じが良い。
-
トルストイの原作を恥ずかしながら未読なのですが、それでもすごく、ものすごく良くて観終わった後じーんと震えてます。とにかく映像が美しい。心情がどくどく伝わってくる。痺れるのにふわふわとして、ものすごいもの見たなーという感じ。
ヴロンスキー役観たことあるなーと思ったらキック・アスなのか! 全然違うじゃないか。色気しかなかった。あんなの一発で落ちてしまう…ってほどにクラクラするほどの色気で、キーラとすごく合っていた。
アンナの寛容な夫役はジュードロウで、その穏やかさと寛容さには目を見張るものが。
それにしてもすごいいい役者ばかり使ってるのね。キティ役に
リリーのすべてのアリシア・ヴィキャンデル、リョーヴィン役にアバウトアタイムのドーナル・グリーソン(と言ってもみんなアンナカレーニナのが先なのだが)
ヴロンスキーの花嫁候補のソロキナ嬢があまり出番なかったにも関わらず可愛すぎた。 カーラ・デルヴィーニュのスクリーンデビュー作なんですね、可愛い……
満足でした! また観たくなりそう。
ジョーライトの作品初見でしたが次はつぐない観たいな。 -
映像、特に最初の40分あまりがすごく美しい。本当に美しい。画面の切り代わりが少なく、カメラの流れるような動きで次の場面に転調する。伝わったかな?とにかく、美しい!!!是非、映像美を見てほしい。帝政ロシアのゴージャスな感じが溢れていて、素晴らしい。
惜しむらくは、主役のアンナを演じるのが、キーラ・ナイトレーであること。この人、表情が乏しく、演技が上手ではない上に、胸がまっ平らすぎて色気もないので、本当に残念。ママが遺したラブソングでの演技が自然体で好感だったスカーレット・ヨハンセンとかがしたらよかったかも。キティー役の女優さんが可愛かった。
内容はさすが、トルストイ。愛と許しがテーマ。アンナ以外は、大なり小なり辛い経験を経ることで、成長をするが、アンナだけは成長をしない。むしろ、我が儘が加速する。そして、本を読んでいないので分からないが、アンナだけが体の関係を愛と思いこむ。刺激的なだけで、本当の愛情とは違うように思う。本はどうなんだろう?気になる。他のきちんと愛を発見できた2組は、その後もトラブルを乗り越え、雨降って地固まる的な幸せを味わう。
原作読んだのがすごい前なのであまり覚えていませんが、
アンナは「黒い服着た太りかけのおばちゃん」、
ヴロンスキーは「若禿...
原作読んだのがすごい前なのであまり覚えていませんが、
アンナは「黒い服着た太りかけのおばちゃん」、
ヴロンスキーは「若禿げ気味のマザコン」みたいな書き方だったような…?
でも原作のアンナが電車に…の場面はさすがの描写で引き込まれました。
しかしその後も話は続き、終盤はリョービンのロシアでの小作制度論。
「戦争と平和」も終盤はトルストイの論文でしたからねえ。
原作でもリョービンとキティがうまく行く場面は良かったです。
ジュード・ロウがカレーニンなのか!
もったいない!
ジュード・ロウがカレーニンなのか!
もったいない!
原作のアンナとヴロンスキー、そんな感じなんですか!?映画では絶世の美男美女でしたよ!(まあ映画ですからビ...
原作のアンナとヴロンスキー、そんな感じなんですか!?映画では絶世の美男美女でしたよ!(まあ映画ですからビジュアル大事ですもんね・苦笑)
トルストイはリョービンに自分を投影していたと何かで読みましたが納得。
ジュード・ロウ、もちろんカレーニン役も渋くて抑えた演技が良かったですが、あと20年若ければ、彼にヴロンスキーをやってほしかった…!彼なら若禿げ設定もそのままいけたのに!(こら)