「手紙」をテーマにしたアンソロジー。姫野カオルコの全編「手紙」という小説『終業式』のような印象はないが、それなりに楽しめた。
収録作のなかでは梨屋アリエの「雲の規格」がおもしろかった。主人公・河野健治の「オレはモテ男で、人気者で、すごい奴」だという自意識と、そこからうまれる同級生に対する「オレが1番で、あいつら2番以下」みたいな認識と、その間で「こんな弱みは見せられん」といったぐちゃぐちゃした感情や下心なんかがうずまくあたり。
河野が、友人でクラスメイトで同じ部活仲間の福田和磨を、いつもの教室ではなくて生物室で弁当を食おうと誘ったときに、福田のほうが「ぼくはね、生臭くて埃っぽい生物室で、男と二人きりで弁当を食うのを愉快に感じるような変態男ではないんだな」(p.81)というあたりは、河野や福田の性のありかたがどうであるにせよ、こういうセリフが出てくるところに、なーんかカナシイものを感じる…(ホモフォビア=同性愛嫌悪はいやなくらい蔓延しているので、自分の性のありかたとは別に、拒否のポーズをとる人は多い)。
若竹七海の「読めない手紙」に出てくる、絶縁状は赤い手紙というのは、どうもわからなかった。「真っ赤な封筒で手紙をもらう」、それが意味するところは「絶交」だと書いてあるのだが、そういう風習(?)の地域(?)あるいは学校(?)もあるのか?あるいは小説の中の創作なのか?(舞台となる高校が山の上にあって、曲がりくねった800メートルの山道が通学路、しかもそこでは「何が起こるか分からない」と新入生歓迎会でさんざん脅されるとか、山道を登っての通学で毎晩眠れないくらい筋肉痛だ、という設定もなかなかすごい。)
(3/17了)
- 感想投稿日 : 2014年4月13日
- 本棚登録日 : 2014年3月17日
みんなの感想をみる