長年臨床の場で「ひきこもり」問題の事例を見つめ、また解決に向かっていた医師が著者。
1998年が第一版。
「ひきこもり」の症状などに関する理解が第一部で理論編となっており、第二部では具体的にどう向き合っていくかという実践編という構成になっている。
最近(2009年)では、あまりひきこもりが社会的問題として取り上げられることは少なくなった様に思う。
それはそういった事例が減ってきた、ということなのかそれとも単に社会がそう言ったことに興味を失ったのか、はわからない。
しかし現在ニートと呼ばれる人々の中には、ある程度このひきこもりと置かれている状況が似通っている人もいるだろう。
この本の中で著者は「ひきこもり」という現象を「個人の病理」ではなく社会システムや家族が抱える病理として捉えている。それは実際的な原因がどうか、ということよりもひきこもりの状態に陥っている人間が社会に復帰するためには、家族や社会との接点の回復がどうしても必要になってくるからである。
「社会的ひきこもり」は不登校からの状態維持によっておこる場合が多い。
また単純にひきこもりそのものの問題よりも、それによって引き起こされる二次症状の方が問題が大きいように思う。
「対人恐怖症」「脅迫症状」などの症状により、いっそう社会に復帰することが困難化し、循環するシステムの様にひきこもりが内側に閉じていく。
興味深いのは、ひきこもる若者の大半が男性である、ということだ。
著者は競争を避けることで、男性のアイデンティティが発展しにくいという社会の現象をそこに見ている。確かに一時期過度に競争を忌避する教育現場があったことは確かだ。もちろんそれは教育だけが問題なのではなく、それを是としていた社会そのものの問題があると見るべきなのだろう。
- 感想投稿日 : 2018年10月9日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2018年10月9日
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