織田信長(5)本能寺の巻(山岡荘八歴史文庫 14)

著者 :
  • 講談社 (1987年10月8日発売)
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感想 : 33
5

五巻まとめて、おもしろかった。しかしおもしろすぎて、これを読んだのは間違いだったかもしれない。もっと後のほうで読めばよかった気がする。
いま読んでいる別の作品はそれはそれで別のおもしろさがあるんだけれども、この作品の武将それぞれの生き様を掘り下げるところが好みにぴったりきてしまったので、あっさりと「○○を斬った」とかで済んでしまうのが、あ、ああー、山岡荘八のだともっとこうだったのにー、となって、もったいない気持ちになる。

信長が魅力的なのは言うまでもないので、他のことを。
普段は穏やかで物静かな家康の、三方ヶ原の戦いで見せる激情がよかった。金ヶ崎の退き口では信長を冷静に諌めていたのに、自分が総大将として危機に陥るとああなるのか、と思った。でも家康は若いのに随分落ち着いてるなあと思っていたので、若さなりの血潮が見えた感じでよかった。
池宮彰一郎「本能寺」では影のうすかった濃姫が、この作品では嫁ぐ前の道三との会話からラストまで魅力的だった。五十近くなっても若い外見の濃姫が「濃はまだ二十代だから」と澄ましてるのがかわいいし、愛情込めて「バケモノ」と呼ぶ信長もかわいい。いい夫婦っぷり。
本能寺の変での濃姫と蘭丸にはぐっときた。終盤の光秀も、もうちょっとこう、何かひとつでも違ってれば未来が変わってたんだろうなあ、という感じで、なんともやりきれなくていい。


ところで与一郎がもっと出てくると何の根拠もなく思ってたんだけど、読み終わってみれば細川父子は意外と出番少なかったですね。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2013年6月27日
本棚登録日 : 2013年6月27日

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