源氏物語 巻二 (講談社文庫)

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  • 講談社 (2007年2月10日発売)
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3

⑥末摘花
末摘花とは紅花の異称。
また新たな恋だ。
今回は琴の音色にやられた源氏。
けれど「源氏の君はおよそ、一度関わりを持ったらどんな女も、すっかり忘れてしまうということが、お出来にならない御性分なのでした」という。
なんとまぁ罪作りな 笑
ここで、同性同士でも和歌を読みあう風習があることに少し驚き。
なにも知らなくて、男女間のことだとばかり思い込んでいたから。
もう1つ、同じ車に相乗りして横笛を合奏しながら帰るほど、頭の中将とは仲がいい。
無暗なことは言えない、気のおけない相手といったところか。
末摘花の姿に驚く源氏の君。
明るいところで見てみれば、胴長で、普賢菩薩の乗り物の象のような鼻(言い方!)をして、先の方が赤い。
顔立ちは長く、色も青白くて、肩のあたりは痛そうなほどごつごつしている。
唯一の取り柄は長く真っ直ぐな黒髪くらいだった。

そうなると余計に可愛らしく思えてたまらないのが若紫。
若紫の前で鼻の頭に紅を塗って戯れる。
……って、こういう感覚が良く分からないんだよなぁ。
普通の感覚でいうと悪い悪戯なんだけど、
まぁまぁお二人で仲睦まじく…な感じを描きたかったんだろうか?
とにかく、一旦末摘花とはここまでに。


⑦紅葉賀
朱雀院への行幸の予行練習。
冒頭、頭の中将と源氏の君を比べる文章があるのだが、
「源氏の君と並んでは、やはり咲き誇った桜のかたわらの、深山木のようにしか見え」ないと、きらびやかな源氏の君。
段々慣れてきたけれど、それにしても凄い。
源氏の君は「世にまたとはないほどのすばらしさ」なのだという。
その素晴らしさに帝は感涙するが、藤壺はあの夜のことがやましく思えて、複雑な心境に揺れ動く。
久しぶりに登場した弘徽殿の女御は相変わらずのいやな女。
この章で、藤壺が出産する。
生まれた子は呆れるばかりに源氏の君の生き写しなのだが、帝は、美しいもの同士は似るものだと思っている。
あらら~。

後半は源氏の君、頭の中将、典侍の、ちょっとしたドタバタ劇。
式部さん、たまにこういう章をぶっ込むよね。

ただラストで藤壺の若宮と源氏の君を並べて
「けれどもこのお二方は、あまりに似ていらっしゃるので、月と日が大空に並んで光り輝いているようだと、世間の人々も思っているのでした」
と結ぶ。
これは行く末の暗示?


⑦花宴
桜の宴が催される。
勿論、藤壺も参列。
宴の席が盛大であるが為、弘徽殿の女御も引きこもるわけにもゆかず参列。
源氏の君が兄の東宮に所望されて、ほんの少し雅楽の1つを舞って見せると、あまりの素晴らしさに左大臣も涙する。

相関図を少し整理すると、
今の帝は桐壺帝。
桐壺帝と弘徽殿の女御の間に生まれたのが東宮であり、後の朱雀帝。
桐壺帝と桐壺更衣の間に生まれたのが源氏の君。
東宮は源氏の君の兄。
弘徽殿の女御は源氏の君が持て囃されるのが面白くない。
そして左大臣とは葵の上の父。
葵の上と源氏の君は不仲だし、左大臣としては中々顔を出さない源氏の君が恨めしい。

宴を終えた夜、藤壺とばったり会えないものかとうろうろする源氏の君が出会ったのは、藤壺ではなく朧月夜。
そしてお酒の勢いで………あ~ぁ、またですか。
源氏の君は、昨日の女性はだれだったのだろうと思い巡らせて、東宮に入内する右大臣の娘だったら可哀想なことをしたかもと考える。
えぇ~っ、これ、いつかバチがあたるぞ。


⑧葵
帝が桐壺帝から朱雀帝(元東宮)へ。
帝が代替わりして、世の中が一新されたということだ。
ますます藤壺に近付きにくくなる源氏の君。
そして葵の上は懐妊。
さて、賀茂の祭の日。
この時は源氏の君ばかりではなく容姿の美しい上達部や御付きの者などがお通りに加わって立派な見物となった為、みながお忍びで祭見物にでかける。
葵の上の悪阻は重かったけれど、少し気分がおさまっているので出掛けることに。
そこで牛車の場所取りで揉めたのが六条御息所。
彼女については「夕顔」の冒頭でも触れられていた。
「原始の君が六条のあたりに住む恋人のところに、ひそかにお通いになられている頃のことでした」
でもこの章では夕顔と出会い、直ぐに夕顔が死んでしまうものだから、六条御息所の元へ通っている場合ではなくなった。
その後もあれよあれよと時は流れ…で、六条御息所は恨めしく思っていたというわけだ。
そのうえ今回の牛車の件。
人目を避けて粗末な風情で出掛けたものの、あとから来た葵の上の牛車に競り負けたうえ、身バレする。
牛車も一部が壊れたりして散々だ。
これは傷付くよね。
プライドも粉々だし、遠くから静かに眺めることも許されないなんて。
この一件は源氏の君の耳にも入り、御息所を訪ねるのだけれど、彼女は会おうとしない。
こんな時でもやはり可愛らしいのは若紫。
一層可愛らしく思えるのだろうな。

伊勢に下るのも、都に留まるのも、世間の笑い者になりそうで、思い悩んで具合も悪くなる御息所。
塞ぎ込む一方だ。
そんな中、葵の上が誰のとも知れず生き霊に取り憑かれる。
このシーン、ページをさいて丁寧に描かれていた。
もしかしたら自分かもしれないと思う御息所は、そんな自分が浅ましくてならない。
物の怪(葵の上)が源氏の君に申し上げたいことがあるというシーン。
葵の上がみるみる六条御息所の姿となってゆくのが恐ろしい。
御息所本人もまた、着物に祈祷の護摩に焚く芥子の匂いが染み込んでいることから、生き霊となっているのは自分なのだと分かる。
若君を産み、葵の上は死んでしまった。
若君(夕霧)の養育は葵の上の母が担うこととなる。

⑨賢木
伊勢へ下ることを決意した六条御息所との最後の一時を過ごす源氏の君。
章のタイトルは、源氏の君が歌を贈る際、榊の枝を差し出したことから。
そして桐壺院が崩御。
桐壺院の秘蔵っ子であった源氏の君にとっては、後ろ楯がなくなるということだ。
桐壺院も分かっていて、自分の亡き後も源氏や東宮を重んじるよう朱雀帝に遺言する。
桐壺院の崩御に伴い、藤壺は出家。
源氏の君からの求愛に耐えられなかったのだ。
朧月夜は尚侍に就任。
朧月夜といえば朱雀帝に召し抱えられる前に源氏の君と関係してしまった右大臣の娘。
懲りもせず関係を続けていた源氏の君に、とうとう罰が。
弘徽殿女御にばれてしまう。
そりゃぁ激怒するよね。。。

⑩花散里
右大臣の勢力も強まり、心労が増えて世の中が嫌になった源氏の君は、心の安らぎを求めて静かに暮らす姉妹の元へ。
「例の御性分なので、さすがにすっかり忘れておしまいにならず…」らしい 苦笑
それにしてもなぁ。。。
「こういうふうに、長い年月を経ても、一度でもお逢いになった女のことは、お忘れにならない御性質ですからかえって、それが多くの女たちにとっては、物思いの種になるのでした」
ほんと、それ。
それが情のもつれを呼んで、要らぬ哀しみに捕らわれる女性が多い。
でもきっと、源氏は源氏で分かってるんだよね(と思いたい)。
男女の恋の儚さとか、人の命の儚さとか。
けれど産まれ持った美しい姿と、若さゆえ浮気な恋心、どの女性もそれぞれの個性が魅力的だと感じる心、情けを掛けてしまう性分が、
己の人生を掻き乱す。
「中には、そうした淡々とした仲を不足に思う人もいて、とかく心変わりして離れてゆくことがあっても、それもまた、ありがちな当然の世の習いだと、源氏の君は達観していらっしゃるのでした。
さきほどの中川の垣根の女も、そうしたわけから、心変わりしていったひとりなのでした。」

小休止的な章だったけれど、ここから源氏の人生はなだらかに下り坂なのかしら?
内容を殆ど知らないので、想像でしかないのだけれど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月17日
読了日 : 2023年10月17日
本棚登録日 : 2023年10月17日

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