初めは全く関係のない短編集かと思ったのだが、人間の狭いスケールと時間感覚で測れるものではないと分かった。それほど壮大な宇宙感覚でまとめられた1冊で、神話のような悠久の時が流れている。
人類にとって当たり前に暮らす日々の均衡が崩れたらどうなるか、身体の能力に限界のあることをもどかしく思った。けれど『ギャルナフカの迷宮』や『漂った男』での人間の生きる力の逞しさにも出会い、「それでも生きよう」と思えるような前向きさを貰った。
特に『漂った男』が良かった。
偵察機で他の星で「生命の匂い」のする風を受ける、そういう表現が新鮮に届いた。パラーザの海はまるで羊水のようだと思った。その海に包まれて生きる地獄を、狂いながらも続けるところが特に良い。
最後の数ページで緊張感が一気に増し、なんとか帰還してほしいと思っていた自分に気付いた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2022年5月1日
- 読了日 : 2022年5月1日
- 本棚登録日 : 2021年11月20日
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