社会学講義 (ちくま新書)

  • 筑摩書房 (2016年9月6日発売)
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《最後に、③家族の情緒的な結びつきを不可欠なものとして重視する、愛情の規範化である。ここで問題となるのは個々人の現実以上に、社会的な規範の水準である。アリエスが強調したように、家族の親密性が社会のレベルにおいて規範化され、価値づけられるという意味において、近代家族は愛情中心主義なのである。》(p.192)

《もし仮に現代ならではの格差の特徴を挙げるとすれば、それは格差が個人に帰責され、脱・社会問題化されるという現象にこそある。そしてこの脱・社会問題化の構造を下支えしているのは、近代家族のプライバシーと自助原則と愛情の論理ではないかと思う。親が子どもにコストをかけることは、社会的資源の多寡や不平等の文脈ではなく、個々の親の愛情として解釈される。子育てや介護にかかるコストは家族のみの責任とされ、家族愛や母性愛や夫婦愛の論理によって正当化される。それが個人への帰責を正当化し、可能とし、推し進めている。
 今問われるべきなのは、現代の「多様性」のなかに見え隠れしている社会的な課題を脱・社会問題化させてしまう、家族の親密性の規範のほうではないだろうか。》(p.210-211)

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感想投稿日 : 2021年1月12日
読了日 : 2021年1月12日
本棚登録日 : 2021年1月12日

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