久しぶりにクックの小説を読んだ。暗く沈んだ、重厚で美しい文体は各作品に共通している。この作品もそうだった。
主人公はポール・グレーヴスという小説家。少年の頃、両親を事故でなくしたうえに、姉を目の前で殺されるという悲劇にも見舞われる。ある時、彼の小説を読んだ読者の一人から、彼女が住んでいる場所で起きた50年前の少女の殺害事件の真相究明を依頼され引き受ける。調査を進めるにつれ、少女に起こった悲劇が、姉を殺された事件と重なっていく。小説の最後に、主人公は少女殺害事件の謎を解くが、それが姉を殺された事件の本当の悲劇を彼に呼び起こさせ、彼の心はその記憶に耐えきれなくなる。
ミステリーとしての謎解きよりも、主人公のポール・グレイヴスの少年時代に起きた、姉の死という物理的な悲劇と、その出来事が彼に与えた生涯に渡って消えない傷の物語が主なテーマ。小説の最後は、彼が希望に向かって歩めそうな場面で終わり、それが救い。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年2月3日
- 読了日 : 2024年2月3日
- 本棚登録日 : 2024年1月26日
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