アフガン、たった一人の生還 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

  • 亜紀書房 (2009年8月29日発売)
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感想 : 19
3

「タリバン幹部のひとりを排除せよ」。2005年6月27日、アメリカ軍は
特殊部隊ネイビー・シールズ(本書では「シール」表記)4人を、まず
偵察隊としてアフガニスタン・クナル州の山間部へ送り込んだ。

偵察任務中に出会った3人の羊飼い。シールズの4人は迷う。この3人の
羊飼いは一般の民間人なのか。それともタリバンに通じる者たちなのか。

作戦本部に判断を仰ごうとするが通信状態が悪く通じない。現場で判断
するしかない。4人が下したのは「解放」だった。それが彼らの命取りに
なる。

ネイビー・シールズ史上、最悪の出来事となった失敗した作戦の唯一の
生き残りが、作家の手を借りて過酷な作戦の現場を綴ったのが本書だ。

冒頭、作戦中に命を落とした仲間の家族を訪ねて彼らの最期を伝える
マーカスの心情を考えると辛くなった。だが、そこからしばらくは一人前
のシールズになる為の訓練と、過酷な訓練を潜り抜けて来た仲間たち
との絆の強さの話が延々と続く。

これが飽きる。「げ…何、この訓練。怖い、死んじゃう」と思いながら
読んだのだが、「これでもかっ!」ってほどに続くのだ。190ページ
近くも。もう、お腹いっぱい。

そして本題。たった4人のシールズが、大量の火器を使用したタリバン
に追い詰められてき、ひとり、またひとりと犠牲になって行く部分は
「もう、やめてあげてっ!」と悲鳴を上げたくなるほどだ。

そんな地獄とも言える一方的な攻撃から、唯一生き延びたマーカスは
パシュトゥン族に匿われた後、アメリカ軍によって救出される。

貴重な証言なのだろうと思う。しかし、読んでいる間ずっとそこはかと
ない嫌悪感があった。それは全編に漂うマーカスの国のやることに
疑問を持たず従い、国に命を捧げるのが当たり前という愛国心の
せいかもしれない。

兵士の仕事は戦場へ赴くこと。そこで一人でも多くの敵を倒すこと。
分かっている。だが、何故、自分たちはここで戦わなくてはいけない
のか…との疑問は微塵も抱かないのだよな。

でも、これがアメリカ的な考えなのかもしれない。常に敵を必要とし、
「強いアメリカ」を世界に見せつけたい国だもの。

これでは憎しみの連鎖が止まるはずがない。アメリカだけが正しい
なんてないんだよな。アメリカだっていろいろ間違ったとをしている
のだもの。

シールズになる為の訓練とその実戦については参考になったけど、
私には少々気持ちの悪い部分が多かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月21日
読了日 : 2015年9月9日
本棚登録日 : 2017年8月21日

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