生きることば―あなたへ

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  • 光文社 (2001年2月1日発売)
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人間は生まれる場所や立場は違っても、一様に土に変えるか海に消えます。何と平等なことでしょう。
自己の孤独にどっぷりつかり、浮かび上がった人間しか、真の人間的やさしさは生まれません。
自分が孤独だと感じたことのない人は、人を愛せない。
人は一度この世の旅に送り出された最後、いやでも前へしか進めない運命を担わされています。一度通った宿へ引き返す道はふさがれていきます。どうせこの世は一人旅という覚悟さえつけば、思いがけない人の情けや風景が、改めてしみじみ心にしみてくるものです。
人間には様々な運命があります。神様は公平で、一人の人間にだけいいことばかり与えません。長い一生を見れば、どんな人も、いいことや悪いことに繰り返し見舞われています。雨の日が1か月も続くということはないのです。雨のあとにはきっと天気がめぐり。青空が上がります。人間の生活も必ず青空が上がります。同じ状態が続かないことを仏教では無常と言います。
自殺など考えない。小さく思える自分の存在が誰かたった一人でもいい、その心に温かな火を灯す人間になれば本当にありがたいことです。たくさんの人にでなくていい。たった一人でいい。犬でもいい。
生きることは働くこと。仕事をさせていただくことです。自分にふさわしい、あるいは自分にできる仕事をさせていただいて、それがひと様の役に立つ。それが生きがいというものです。仕事があることはとても有難いことです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 瀬戸内寂聴
感想投稿日 : 2010年8月8日
読了日 : -
本棚登録日 : 2010年8月8日

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