菅原道真を左遷した左大臣藤原時平、
藤原基経の兄である藤原国経、
在原業平と並ぶ色男として知られる平貞文などが登場する。

老大納言国経は、若く美貌の妻である北の方
(筑前守在原棟梁(在原業平の長男)の娘)を、
若くて時の権力をひと手に握っている甥の時平に、
驚くべき手法で奪われる(差し出してしまう)。
しかし国経は北の方への思いは全く断ち切れぬままこの世を去る。

また、その北の方と幾度か浅からぬ仲となっていた、
平貞文も、彼女が時平のものになったことで、
思いを燻らせている。

後半は、国経と北の方との間に生まれた藤原滋幹の、
母への思いが描かれる。

藤原時平は、今昔物語の記述から、
「富貴と権勢と美貌と若さとに恵まれた驕慢な貴公子」、
また大鏡の記述から「可笑しいことがあると直ぐ笑いだして
笑いが止まらない癖があった」と、
平貞文は「女に好かれる男の常として、なまけ者ではあるけれども、
洒脱で、のんきで、人あたりがよくて、めったに物にこだわらない彼」
と表現されている。

私は時平が国経の北の方を奪う流れや、
平貞文の恋模様などが描かれる前半部分が、
文章に引き込まれて次々とページを捲ってしまうほど面白かった。
特に国経の北の方を奪うシーンは臨場感があった。
時平の傲岸さが際立っていて憎く思う。

2013年5月12日

読書状況 読み終わった [2013年5月12日]
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