宗教VS.国家 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2007年1月19日発売)
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フランスの女性参政権    -2007.04.18記

1789年の人権宣言をもって革命の先駆をなしたあのフランスにおいて、女性の参政権が認められたのは、第二次世界大戦の終結を目前にした1944年であったという、工藤庸子の「宗教vs.国家」書中の指摘には驚きを禁じ得ないと同時に、おのれの蒙昧を嘆かずにはいられない。
日本における女性参政権の施行が終戦直後の1945年なのだから、欧米の近代化に大きく立ち遅れた後進のわが国と同じ頃という、フランスにおけるこのアンバランスな立ち遅れはいったいなにに由来するのか。
女性参政権において、世界の先陣を切ったのはニュージーランドで1893年。1902年にはオーストラリア。06年のフィンランド、15年のデンマークやアイスランドが続き、17年のロシア革命におけるソビエトとなる。
18年にはカナダとドイツ、アメリカ合衆国は20年で、イギリスはさらに遅れて28年だが、
1789年の革命において国民主権を謳い、1848年の二月革命によって男子の普通選挙を実現するという世界の先駆けをなしたフランスが、女子においては諸国の後塵を拝するというこのギャップの背景には、一言でいえばどうやら圧倒的なカトリック教会の支配があったようである。フランス国内にくまなく根を張ったカトリック修道院の女子教育などに果たした歴史的かつ文化的役割は、われわれの想像の埒外にあるらしい。
1866年の調査によれば、フランスの総人口約3800万人のうち、3710万人がカトリックであると答えているという。
プロテスタントは85万人、ユダヤ教徒は9万人にすぎない、というこの圧倒的なカトリック支配と、数次にわたる革命による共和制の進展が、どのような蜜月と闘争を描いてきたのか、その風景ははるかに複雑なもののようである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評論-2/歴史.宗教.民俗系
感想投稿日 : 2022年10月16日
読了日 : 2010年10月17日
本棚登録日 : 2010年10月15日

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