賭博者 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1979年2月22日発売)
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感想 : 80
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最終章となる第17章がとても印象的だ。
マドマアゼル・ブランシェとのパリでの浪費生活を終えたアレクセイは、ルーレット賭博のためにルーレテンブルク、ホンブルクと流れ着き、各地で手痛く敗北する。
やがてホンブルクで再開したアストリーから、かつて恋い焦がれていたポリーナの真の気持ちを告げられる。その内容は、あれだけつれなかったポリーナが、実はアレクセイを愛していたというものであった。これを機にアレクセイは再起を志す。しかし、既にアレクセイの生活から賭博は切り離し難く、再起のための手段と称して再び賭博に手を出そうとする…。最早、彼にとって賭博を打つことは経済的再生の手段ではなく、刺激を得る為の目的となったようだ。
私は小心者であるから、博打ごとはとても苦手だ。お金が増えるのは有難いが、無為に失くすかもしれないと思うと興奮よりも恐怖が先立ってしまう。そのような自分には、この賭博者で描かれているアレクセイやワシーリエブナお祖母ちゃんの心境について理解仕切ることは難しいだろう。分かるといえば、失ったものを取り戻すために更に失うおそれのある行動をしてしまう心理は分かるかもしれない。
月並みな感想だが、博打は怖そうだから極力避けようと強く思った、というところです。

この本のもう一つ印象深いところは、自分自身の価値観に照らすと、登場人物のほぼ全員が嫌な奴ばかりで、イライラさせられるのに、途中で読むのを放棄したいとはならないところかな。それだけ惹きつけるものがある。
人柄としてはアストリーが一番マシだが、ポリーナに対する対応は英国流の騎士道精神に隠した下心がありそうで嫌だし、他人の破滅をそっと眺めて楽しんでいるようにも感じてしまう。
最大のイライラ人物はブランシェでしょう。次点で賭博場にいたポーランド人たち。
やたらとこの本はフランス人とポーランド人、そしてロシア人に厳しい。どんな作者も一定の批判精神を持って作品を書く場合、自国民には当然に厳しくなるかも知れないが…。
ところで、この本は初版が1861年に出版されたそうです。そうするとクリミア戦争でフランスがトルコ側についた恨みや、ロシアがポーランド王国を支配していたことからくるポーランド人への蔑視なんかがあったのかもしれないですね。また、罪と罰で悪し様に扱われたユダヤ人ですが、端役ではあるものの、この本ではちょいと良い人として現れるのも不思議な感じです。ネットで調べる限りではドストエフスキーさんは、晩年、ユダヤ人嫌いだったようです。これを書いていた当時はまだそこまで嫌いではなかったのでしょうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年11月17日
読了日 : 2019年11月17日
本棚登録日 : 2019年11月6日

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