夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)

  • 新潮社 (1971年8月3日発売)
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本棚登録 : 1894
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言わずと知れた、シェイクスピアによる喜劇です。とはいっても、喜劇と本当に分類してよいのかは研究者のあいだで見解がわかれるようです。

本作の訳書は、さまざまな出版社から出ています。新潮文庫をおススメするのは、以下のニ点が挙げられます。

まず一点目は、この文庫には『あらし』も所収されているからです。
舞台の設定としては『夏の夜の夢』と似ているのですが、『夏の夜の夢』が戯曲家としてのシェイクスピアの成長期に書かれたものであったのに対し、『あらし』はその晩年期に書かれたものであることから(参照:https://www.asahi-net.or.jp/~WF3R-SG/nsshakespeare3list.html)、ある意味で両者は対照的です。そして読んでみると、たしかに作風などの変化だけでなく、作者自身の変化も想像させるくらいに相違があることを感じれるでしょう。いずれにしても、シェイクスピアのキャリアが上向きであった時期と下向きであった時期を同時に知れるのは、お得感があります。

そしてニ点目は、解説がよいことです。
シェイクスピア作品の解説は概して、書かれた年代の特定や、作品のジャンル分けなどにページを割いている感が否めません。訳者は学者であることも少なくないので、どうしてもそうした点が気になるのでしょう。しかし、そうしたことは一般読者にとっては読後に最も気になることではあまりないので(それこそウィキペディアで知れることも少なくないので)、もっと内容などに関して述べてほしいという思いがありました。そして、この文庫の解説は、そうした思いを十分とはいはないまでも、ある程度は満たしてくれる内容です。さらには、『あらし』を視野に含めた視点から語ってもいるので、一点目で述べたようなシェイクスピアのキャリアにおける成長から晩年にかけての変化が解説されているのも、お得感があります。

文庫は安価で軽量という二大特典がありますが、それ以外の利点も感じられたことは、個人的にとてもうれしいことでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年6月24日
読了日 : 2021年6月24日
本棚登録日 : 2021年6月24日

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