多情多恨 (岩波文庫 緑 14-7)

著者 :
  • 岩波書店 (2003年4月16日発売)
3.47
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本棚登録 : 145
感想 : 11

言文一致体としては完成の域に入っているのかなと思う。これ以前のものは、なにか講談調というか芸人調で、余計な装飾も多かった。

作品の内容としては、天涯孤独の男性が愛していた妻を失って嘆き悲しむ話です。
このころの女性はみんなこんなに行きとどいた世話を夫に対してしていたのかと思うとびっくりします(苦笑)。卵を割るのも妻にしてもらっていたんでは、それは妻に死なれてはその先にっちもさっちもいかなくなるのは当然とも思えます。
しかし、この男性に関しては、妻と言うよりも母親がほしかったのではないかと思われます。もし葉山さんのうちに子供がおらず、御隠居もいなかったらば、主人公にとっては理想郷であったろうし、はなはだ外聞は悪いことになっていたのかもわかりません。

そういう意味では御隠居さんは大変よくできた常識的な方で、身をもって息子の家庭を守ったという意味でgood job!だったと思います。ただ小説的には盛り上がりのないものになってしまったかもしれません。
まあ、どんだけ自分の妻を信頼し、また自分の父やこども雇い人達もいるとはいえど、あまり長いこと、独身男性を自分の家においとくのは好ましくはないよな~と思いました。

また、お島さんは主人公(彼も悪い人ではありませんが)などよりももっとよい縁談があってしかるべきで、姉のあとに彼女を据えようとする姑の考えはちょっと私には理解できませんが。それだけお婿さんとして気に行っていたということなんでしょうか。

主人公の方は悪い人ではないし、いろいろ同情すべき点があるにしても。やはりもう少し人間的に進歩すべきであろうし、そういう視点がないとやっぱりお話的には盛り上がりに欠けるのではないかと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: #それなりブックガイド
感想投稿日 : 2017年10月4日
読了日 : 2017年10月4日
本棚登録日 : 2017年10月4日

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