『平成二十五年 七月 一日 発行』版、読了。おそらく初版。
現時点での新潮文庫版「十二国記」シリーズの最新刊にして、短編集。
全部で四編収録されており、うち最初の二編は、以前に雑誌で掲載済み。残り二編は描きおろし。
いずれの短編にも、これまでに登場してきた人物が一切登場することはなく…ある地域で起こった出来事に関して、泥臭く活路を見出すべく、ふんばる(各短編における)主人公たちを描いた内容でした。
そして久々に十二国記シリーズを読んだせいか、その専門用語の多さにちょっと疲労困憊(;´Д`)
それを通り越して、ようやく最初の短編「丕緒の鳥」を読了してからは、すんなりと読み通すことができました☆
以下、各短編の感想です☆
・「丕緒の鳥」
「陶鵲」という祭祀に関してのお話でしたが、自身の仕事に対する情熱について無気力気味だった丕緒がいかに、また取り組み、そしてその役目を全うしていくかは、「仕事のモチベーション」について考えさせられる話でもありました。…とはいえ、冒頭の専門用語の羅列には難儀しました(;´Д`)
・「落照の獄」
凶悪犯罪者に対する判決の是非を殺刑にするか否かで問う内容。いわゆる死刑制度について、ひたすら現場の人たちが、どう判断するか懊悩するお話。オチを言ってしまうと、読む気が完全に失せてしまうので、ここでは敢えてカキコしませんが…個人的には、モヤッとする終わり方でした。
・「青条の蘭」
植物の山毛欅に急速に広がっていく大病が見つかり、その治療のために、何が効果があるのか、そしてそれをいかに迅速に処置していく方法があるのか…という、一見「山毛欅があろうがなかろうがどうってことないんじゃないの?」という状況を、納得のいく経緯を設定した作者には脱帽しました。
そして後半からは「走れメロス」をなんとなく思い出しました。読んでいけばわかるかと。
・「風信」
短編の中では、一番読みやすかった内容でした。先の三編を読了していたことで世界観に慣れたせいもあるかもしれませんが。
暦に関して夢中に作り上げる人たちを、孤児となった連花を通して描いた話。「丕緒の鳥」といろんな意味で「対」をなしている気持ちになったのは、設定的に同じ時期に起こった出来事っぽいせいかもしれません。
あと、仕事に対して情熱のカタマリになっている人たちが描きまくられていたせいかも。
とはいえ、家族を失った連花が、また同じ目にあって、悔しさなどが強く感じられた複雑な思いを味わいながらも、新たに訪れるであろう新時代の予感に向かって締めくくられる内容は、まだ救いがあるように感じました。
…とまあ、今回も民衆路線で描かれていて、テッペンの王様と愉快な麒麟たちが登場することはありませんでした。
しかしながら、十二国記のシリーズらしい、人の生き様が描かれていた内容だったと思います。
巻末の解説は作家の辻 真先さんでした。この解説を読んで、グッとこの本の内容がひきしまった感がありましたが、準新作的な内容だっただけに、できれば作者のあとがきが欲しかったなあ…なんて、思いました。
- 感想投稿日 : 2013年8月9日
- 読了日 : 2013年8月9日
- 本棚登録日 : 2013年8月9日
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