政府は必ず嘘をつく アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること 角川SSC新書

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  • 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング) (2012年2月10日発売)
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米国野村証券に勤務中、アメリカの9.11テロに遭遇。
以降、ジャーナリストとして活動を行っている著者。

「政府や権力は嘘をつくもの」ということを前提に、
原発、TPP、東北震災などの日本の重要な問題に対する真実、それを隠そうとする政府はどんな意図を持っているのか、を伝えてくれるとともに、アラブの春やバラ色革命などの世界情勢の裏側の現実も教えてくれる一冊。

これから、僕たちに求められるのは、発表される情報に疑いを持ち、自分たちで調べて、判断して、そしてそれに対する行動だと思った。
今まで以上に、毎日を真剣に考えて生きる必要があると痛感した、そうでなければ、明日は今までの生活が全て壊されているかもしれないから。

「違和感」という直感を見逃してはならない。

以下、気になった点をピックアップ。

■ショック・ドクトリン
⇒災害やテロ、クーデターや大規模伝染病など、人々が恐怖とショックで思考停止に陥っている間に、企業寄りの過激な市場化政策を推し進めてしまう手法。
*ハリケーン・カトリーナの被害を被ったニューオリンズでは、「復興」の名の下に、地元民の意見を完全に無視した大規模な民営化が行われた。政府と癒着のある企業に事業が任せられ、政府は【不法移民の雇用解禁】と【最低賃金の撤廃】という規制緩和を行ったため、地元民は大きな打撃を被った。また、市場原理主義をベースとした教育改革(ブッシュ政権下の「落ちこぼれゼロ法」)により、教師は大幅に解雇され、組合が解体されてしまった。

現在の日本に鑑みると、東日本大震災の被災地がそこに該当。
政府は、同震災の被災地を「復興特区」に認定、被災地の農地や漁業権、住宅などを、外資を含む大資本に解放し、金融等の規制緩和を適用。企業や行政に大きな権限を委ねるものとなっている。

■TPP
⇒2015年までに工業製品、農産物、知的所有権、司法、金融サービスなど、24分野の全てにおいて、例外なしに関税その他の貿易障壁を撤廃するという内容。
企業がその国の政府を相手に訴訟を起こす権利(ISD条項)も付与される。例えば、政府が自国の産業に対して、保障制度などを採用した場合、外資などの企業は"不当だ!"と訴訟を起こすことができるようになる。

■リビアの真実
⇒リビア人は、高学歴・高福祉の国であるリビアを誇りに思っている。独裁者と呼ばれるカダフィは、家を持つことは人権だと考えており、新婚夫婦には約5万米ドルもの住宅購入補助金を、失業者には無料住宅を提供、豪邸は禁止。車購入時、政府が半額を補助。電気代は無料、税金ゼロ。教育・医療は高品質のものが無料で受けられる。大家族の食料費は固定相場、ローンは全て無利子。農業を始める国民には、土地、家、家畜、種子など国が無料で支給。カダフィ政権が始める前の識字率は10%以下だったが、現在は90%以上。これらの政策は、全て豊富な石油資源によるもの。
アラブの春と呼ばれる運動は、石油などの利権が絡んだ西欧メディアによる"メディア戦争"。

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感想投稿日 : 2013年2月3日
読了日 : 2013年2月3日
本棚登録日 : 2013年1月19日

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