チョコレ-ト・アンダ-グラウンド

  • 求龍堂 (2004年5月1日発売)
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5

ときは現代のある国。
選挙で勝利をおさめた『健全健康党』は『チョコレート禁止法』なるものを発令する。
それが狂気のはじまりだった。
国じゅうからありとあらゆる甘いものが処分され、
街には四六時中、パトロールするチョコレート探知車があふれ、
横暴なチョコレート警察による強制捜査が行われた。
いつしかチョコレートだけでは飽きたらず、スーパーマーケットや商店の砂糖や蜂蜜、シロップにプリン、漫画までもが健全なものに取り替えられ、
チョコレートの包み紙を誤ってポケットに入れていただけで『再教育』という名目で刑務所に収監される恐ろしい世界と化していった…。


いやぁ~児童書ながら背筋がぞ~っとした。
荒唐無稽の作り話だと笑える人もいるかもだけど、僕にとってはあたかも自分の思春期を補完、肯定してくれるような圧倒的なリアリティを感じた。
この物語の中で魔女狩りにあう甘いものやチョコレートを
僕の好きなロックや不良文学、映画に置き換えて読んだからだ。
いや、真面目な話、共謀罪法案の採決が強行された今の日本を考えるとまったくもって人ごとじゃない。
監視社会となり、言論を封じられ規制される不安や危険性は誰もが持っているハズ。


個人の趣味や嗜好品が取り締められ奪われる恐怖感。

大人になればなるほど、時間が足りなくなるので生きるために必要なものだけになってくるのは仕方のないことだ。
人は歳を重ねるごとにあんなに好きだった音楽を捨て、本を読まなくなり、夢を諦めていく。
想像し夢想することを止め、チョコレートだってスナック菓子だって大人には必要のないものだと
どこか言い聞かせて。


でも歳をとってあとから振り替えってみれば、なんてことはない。
一見必要のないことや役に立たないと思うモノの方が
実は人間的な深みを作るためには欠かせないモノだったり、それに触れることが人間力を養ってくれてたりすることがよ~く分かる。


好きなものがなんの理由もなく
ある日突然禁止されたら、人はどうするだろう。
(それは自由を奪われることと同じだ)

そう、声を上げて戦うのだ。

子供にだって権利があることを分からせるために
物語の中、ハントリーとスマッジャーの二人の少年は
雑貨屋のバビおばさんと共に
政府を出し抜いてチョコレートを密売することを思いつく。
自由のために、全ての子供たちがチョコレートをかじる権利を求めるために
声を上げ、巨悪に立ち向かうってところが、本当にカッコいい。

忙しい中、1日5分でもいい。
想像の世界を飛び回れるひとときを持ちたい、
自分が勝ち取ってきた『好き』を簡単に放棄する大人になんてなりたくない。
この本を読んであらためて思った。



すべての者に、自由と正義、
そしてチョコレートを!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2018年1月13日
読了日 : 2018年1月13日
本棚登録日 : 2018年1月13日

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