満願

著者 :
  • 新潮社 (2014年3月20日発売)
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感想 : 986
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2015年「本屋大賞」のノミネート作品で、第27回山本周五郎賞も受賞しているミステリ短編集ということで手に取りました。初読み作家さん。
6編それぞれ警察もの、社会派もの、ホラーもの等、違ったアプローチで描かれていて、違う世界観でのミステリになっていて短編なのに満足度が高かったです。
いろんな引き出しを持ってる作家さん。それだけじゃなく、作品に漂う雰囲気が独特で印象的です。市井に生息するごくふつうの人間のダークサイドがどの作品でも浮き彫りになっていて、仄暗い余韻が残ります…

鮮やかなトリックで魅せるミステリじゃなくて、動機にはっとさせられる展開。読み進むうちに張られていた伏線がきれいに回収され、最後に犯人の心の闇に行き当たることに。
表題作はレトロな雰囲気で引き込まれる話でした。でも、時代設定がちょっと違和感。妙子さんステキでしたが、和服の若奥さんって当時はもう絶滅危惧種です。戦前設定にしてほしかった。
深大寺がうまく使われていて、このシーン心に残りました。
「柘榴」はTL系?もっとエロティックでもウェルカムでした。
「夜警」は警察ものの好きな設定。客観的には美談でも、真実はまるで別もの…というのはリアリティがあります。
「万灯」はお仕事もの。男の生き方の是非を問う話。
世のため人のため、会社のためという大義名分のもと、どんどん道を踏み外してしまう伊丹。短編なのにとてもスケールの大きいストーリーでした。
「関守」はミステリとホラーのいいところ取りで謎解きとハラハラの両方が楽しめました。
「死人宿」は作品中で一番謎解き部分が本格的でした。

どれもはっきりと脳内映像化されるレベルの、絶妙な描写で楽しめました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノベル
感想投稿日 : 2015年2月14日
読了日 : 2015年2月14日
本棚登録日 : 2015年2月14日

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