雨・赤毛: モーム短篇集(I) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1959年9月29日発売)
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本棚登録 : 867
感想 : 89
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半端じゃない。別格に面白い短編集でした。雨、赤毛、ホノルル、どれも素晴らしい。雨の実際にああなったこうなった、とは言わず、だけど明確で現実的でどうしようもないラストに衝撃を受けました。これホントどうしようもない。起こった事、そしてこれから彼女はどのようにして生きていけばいいんだ…!と考えるだけで相当楽しいです。すげぇ、小説ってのは本来こうあるべきなんだなぁ。前半の現代にもリアルに居そうな真面目な宣教師夫妻、というのを強調する描写も巧い。それを客観的に見守ったり意見したりする立場としてのお医者さん夫妻も巧い。本当にすごいなぁすごいなぁとしか言いようが無いです。何でこんな頭の悪そうな感想しか出ないのかと悔しいくらいだ。赤毛は冒頭でうっかり生理的嫌悪感を催しそうな赤毛の船長をしっかり印象付けて、その上で夢のように美しく幸福な若い二人の恋物語を展開させ、さらに最後に全部の夢から醒めさせ、「ああうん、まぁ実際そうだよね」と頷かざるを得ない締めで終わる巧さ。世にも奇妙な物語にびびっている場合じゃありません。ホノルルも愛する人のために醜い男に体を許す美しい少女の姿をあんなにもキラキラキラキラ輝かしく描写しておいて、最後にもう、もう…モームすげぇ。小説を読むということの楽しさを、久々に痛いほど思い知らされて幸せでした。★5つじゃ足りないくらい。他のも是非読みたいです。また凄く絶妙な良い位の長さなんだよな…!今まで読んだ外国の方の作品の中でいちばん面白かった。とても良い時間をすごせた。

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感想投稿日 : 2007年2月13日
本棚登録日 : 2007年2月13日

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