(上巻から続く)下巻からいよいよ主役の元CIA工作員のジェイスン・モンクが始動する。彼には工作員時代に痛恨の記憶がある。自ら発掘し、ロシアで運営していた"資産"たちを守れなかったことだ。それはあの「エイムズ事件」に深く関連している。諜報の世界に関心があるなら知らぬ者のない現実の事件である。これを期にスパイゲームから足を洗い、カリブ海で静かに暮らすモンク。そこにロシアでの工作の依頼が舞い込む。彼は断固として拒否するが、ある男の名を聞いた瞬間に気が変わるのである。
ありとあらゆる要素が絡み合い、とにかく夢中になることは請け合える。ロシアの新たなる"イコン"は一体なんなのか?それが明かされた時には、なるほど保守主義者のフォーサイスらしいと思わされたものだ。小説の最後にナイジェル卿が仕組んだ工作の全容が開陳されるが、それがあまりに痛快で笑ってしまうほど。いや参ったの一言だ。
本作は分かりやすい勧善懲悪ものともいえ、ラストのバトルといい、映画向きの作品という印象を持ったが、実際にパトリック・スウェイジ主演でTVムービーになっているとのこと。未視聴だが、密度の濃い作品だけに二時間あまりでまとめ切るのは難しそうだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
スパイ小説
- 感想投稿日 : 2023年9月8日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年3月30日
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