一九八四年 (ハヤカワepi文庫)

  • 早川書房 (2009年7月18日発売)
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本棚登録 : 1710
感想 : 146
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独裁専制国家に生きるウィンストンはその体制に疑問を抱きながらもそれに従って生きていたが、ジュリアとの出会いをきっかけに国家叛逆に進もうとする。

世界に名だたるディストピアSFの金字塔です。ようやくといった感じで読んでみましたが、これは心折れますね。もう少しほら、救いというか、明るい未来を見せて欲しかったと言うか。おかげでこの本に引きずられたようなひどい夢を何回か見ました。
さて、この本でとても読み応えがあったのはそのストーリーもそうなのですが、戦争や権力を再定義したパートで、あまたの独裁者や専制国家が権力を権力として保持したいがあまり貧困や憎しみ、そして戦争を道具としてきたのか、実にわかりやすく描けていたし、共産主義的な体制と富の占有、独裁がなぜ相性が良いのかなどが理解できてすごく勉強になりました。最後はもうこちらも泣きそうな展開で終わるのですが、解説を読むとストーリーが終わった後に実は展開があったことが示唆されているらしいことなど、読み方が難しい本だなあ、という感想も持ちました。
市民を抑圧し、富を収奪するような独裁国家というものは民衆の力によっていずれ倒されるのである。それは歴史が経験してきたことであって、一定の普遍性はありそうです。しかし本当にそうなのか、ということは、実は証明できることでもないのかもしれない。お隣の国では3代にわたって独裁が続いているけど、民衆の中にどれだけの革命機運があるのかわからないし、むしろ無さそうにも見える。また別の隣国では今のところ一党独裁が支持されているようだ。北の大国は戦争などやらかしてしまったので怪しいけど、プロパガンダが効いているのか国民の支持は高いらしい。まあ、かといって民主主義が安定かといえば全然そんなことはないので人間が安心して自由に平和を謳歌できる世界線というのは依然として見えないのだなあ。などと考えたりしました。今の世界とこれからの世界をどう捉えていくのか、重い課題をつきつける本で、やはり読み継がれる良書だと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月20日
読了日 : 2023年8月20日
本棚登録日 : 2023年8月20日

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