勝負師と冒険家―常識にとらわれない「問題解決」のヒント

  • 東洋経済新報社 (2010年2月19日発売)
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感想 : 25

将棋の羽生名人と、海洋冒険家の白石康次郎氏の対談です。
自分は将棋ファンで羽生ファンですし、羽生さんの対談はビジネスのヒントにもなるので、早速読んでみました。
将棋とヨットという専門がそれぞれにありますので、やや専門的な内容はありますが、詳しくなくても十分読んで楽しめる1冊です。

どこにも接点がなさそうなふたりですが、冒頭でそのカラクリが明らかになっています。つまり同じ会社の講演会で別々に話をして、主催者がふたりを引き合わせたということでした。

サブタイトルにありますが、「問題解決」が大きなテーマ。
羽生名人は40歳になり、盤上ではやや過激な手を指してちょうどバランスがとれていると考えているようです。これは自分のアドバイスとして考えると、若いときよりもリスクを知って腰が引けた状態になってしまっているので、無理だと考えて最初から手を出さないのではなく、実行することが大事だということになるかと思います。
自分自身、行動力に欠けていた部分がありますので、常に意識しておかなければならない部分だと感じました。

白石氏は、ヨットで外洋を世界一周するようなレースを戦っている人ですから、レース中の判断ミスは艇を壊したり、最悪命を落としたりすることをよく知っています。調子がよく、がんがん突っ込んでいけるときは1レースに1日くらい。あとはどれだけ抑えていくかの世界です。これを自分のアドバイスとするなら、猪突猛進はよくなく、熟考した上で行動せよということになるでしょうか。
また、最近のヨットレースでは天候や位置など各種の観測機器のデータが重要となりますが、調子のよいときは自分の判断が機械に勝り、層でないときは逆転するという考え方が印象的でした。機械を利用しても、依存しすぎてはいけないということですね。

昔と今の時代環境の違いについても述べられています。ふたりが共通の認識として持っていたのは、現代はモノや情報が有り余り、子供たちが情報に振り回されて小さくまとまってしまっているということ。モノや情報が増えるのは豊かさの象徴であり、多くのメリットがあったのですが、子供たちには難しい時代だと思います。

さいごに、著者ふたりが若い世代にかけたい言葉が非常に心に残りました。
白石氏「素直にまっすぐ」。生きていく上でいろいろな困難があるが、逃げないで受け入れれば、自分が困難の主導権をとれるようになる。
羽生名人「裏切らない」。他人だけではなく、自分も裏切らない。周囲の期待や空気を意識しすぎて、自分のやりたいことを隠してしまうのはどうだろうか。
人生訓やビジネス書として、取り上げたい1冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年8月19日
読了日 : 2011年1月11日
本棚登録日 : 2011年8月19日

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