[浦島さん]
次は浦島太郎の語り直し。主要登場人物ふたり(ひとりは亀だが)も語り手も、背景を理屈でかためまくるコメディ。「無限に許される」という、現代にも通じるような夢が語られたあと、無慈悲なエンディングに引き戻され、けれども、最後に「救ひ」という慈悲でもってしめるあたり、後味が良いのがまた面白い。
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[「瘤取り」まで]
昔話の太宰流語り直し。防空壕のなかで五歳の女の子の父親が絵本を読み聞かせながら、その実、胸のなかではこんな物語になっているのですよという、ちょっと凝った背景があることもあって、エピソードが太宰の時代の「現代」風に味付けしてあって、面白い。語りの合間に語り手のつっこみが鬱陶しいほどに入っているのだが、それがとにかく面白くて、よい。
「瘤取り」は悪い登場人物のいない話になっている。というか、瘤を取ってもらったお爺さんもつけられたお爺さんも、ちょっと可哀想なお話。
読書状況:いま読んでる
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2019年12月18日
- 本棚登録日 : 2020年1月7日
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