貴族の徳、商業の精神: モンテスキューと専制批判の系譜

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  • 東京大学出版会 (1996年7月5日発売)
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今なお政治論、憲法論において参照されつづけるモンテスキューの思想を、貴族の徳をめぐる議論の系譜に位置づけながら、アンシャン・レジームにおける名誉概念の重層性を巧みに論証している。比較対象として、フェヌロン、ブーランヴィリエ、サン=ピエールといった先行する思想家たちが挙げられ、政治社会を構成する人間に求められる資質をめぐる論争の脈絡が再構成される。そしてアンシャン・レジーム下で徐々に注目されていた商業従事者の備える資質と政治社会の構成員に求められる規範的資質をいかに関連付けるかをめぐる解答の一つとして、モンテスキューの徳をめぐる議論が位置づけられていく。モンテスキューが封建制の成立の歴史研究と商業社会の勃興から導き出すのが、政治的自由と市民的自由の極限的には矛盾しかねない特性である。ここにおいて、旧ヨーロッパにおける政治=市民社会の等置図式は、潜在的にではあれ掘り崩されることになる。のちのゲルマン・イデオロギーや共和主義に対するモンテスキューの影響を考えるうえでも示唆に満ちた研究書である。

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感想投稿日 : 2013年9月12日
読了日 : 2013年9月12日
本棚登録日 : 2013年9月12日

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