透明な囲いの中の青年は、寝息をたてているかもしれなかったが、周りに配置された生命維持装置の音によってかき消され、いつの間にか担当医師がそばに来ていた。
「残念ながら、今後、意識が戻る見込みは極めて薄いといわざるをえません」
宮本夫妻にとって残酷な宣言を行った。
「でも、全然見込みがないわけではないんですね」宮本は確認した。あいつに声をかけてやりたいんです。最後に一言だけ」
後は医師たちに任せ、集中治療室の前から離れた。息子が寝たきりになったのは三年前だが、夫婦の戦いは、彼(トキオ)の誕生が決定された時から、今日の苦悩は約束されていた。息子の病名は、グレゴリウス症候群だ。
結婚前、彼女から私は病の遺伝子を持っていると告げられた。それでも一緒になる決意をした。宮本は悩み考えた。自分の胸に引っかかっている正体を探していた。
やがて彼の耳にある青年の声が蘇った。
明日だけが未来じゃない----------。
2002年七月に「トキオ」を「時生」と改題した作品です。
宮本拓実(主人公)❘妻麗子
麗子はキャリアであるが故に、気を付けていたが妊娠した。妻は当初堕胎を考えていた。
拓実は、産んでほしいと麗子に頼んだ。その子はきっと、産まれたがっている。「名前はトキオだ」妻「前から決めていたの?」
トキオの病が発症した。
拓実は妻に「じつは話しておきたいことがある。時生のことだ」「ずっと昔、俺はあいつに会ってるんだ」
麗子「どういう意味?」
拓実「今から二十年以上前だ。俺は二十三だった」「あいつは時間を超えて、俺に会いに来たんだよ」
物語は漸く動き出した。
過去を変えることは出来ない。しかしタイムパラドックスの問題はクリアしている。
著者らしい不思議な物語。
ファンタジーミステリ小説です。TOKIOは空を飛ぶ~♪
読書は楽しい
- 感想投稿日 : 2023年11月11日
- 読了日 : 2023年11月9日
- 本棚登録日 : 2021年5月17日
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