1997年刊行のデビュー作。
著者の代表作といえば『特捜部Q』シリーズで間違いないだろうが、本作は第二次大戦〜戦後を舞台にしたサスペンス。
ドイツに墜落した英国軍のパイロット2人が、追っ手から逃げるうちにどんどん逃げ場を失って行く冒頭にワクワクした。病院列車に逃げ込んで、最初の追っ手は振り切ったものの、重体の親衛隊将校に化けるしかなかったばっかりに……。
また、精神病院に収容されてからの、緊張感あふれる人間関係も面白い。この2人以外にも偽患者が何人かおり、どうも彼らは何か良からぬことを考えているようだ……。
さて、後半の第2部、戦後に入ってからは、脱走に成功し、今は医師としてそれなりの地位を築いたブライアンが主人公になる。精神病院に取り残された相棒のジェイムズの行方は未だに解らない……。
若書きというのか、第2部に関しては勢いを感じるものの、ややご都合主義に振れているきらいがあって、一部の登場人物の言動にわざとらしさが拭えないところがあるのは残念だった。
反対に迫力があって引き込まれるのはアクションシーン。これは後の『特捜部Q』にも通じるところが感じられた。また、『特捜部Q』は一種のキャラクター小説としても読めるのだが、本作でも登場人物の造形は高い水準にあると思う。
本邦では『特捜部Qの〜』という枕詞がつくユッシ・エーズラ・オールスンだが、未邦訳のノンシリーズ作品が3作あるようなので、こちらも邦訳されることを祈りたい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年10月17日
- 読了日 : 2015年10月17日
- 本棚登録日 : 2015年10月14日
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