大人問題 (講談社文庫)

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  • 講談社 (2001年5月8日発売)
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 中学1年生の娘が、40代の母親を刺し殺した事件があった。なぜか、暗澹たる気持ちになる。
子供たちの置かれている状況が、いじめ、ひきこもり、不登校などの問題がある。子供の問題である。
ところが、五味太郎は、大人問題が大きな問題だという。
五味太郎が、「まじめな子どもにふまじめな大人が説教する」と指摘し、もっと「子どもから学ぶべき」という、提起をしている。たしかにそうである。
とにかく、大人たちは、疲れきっている。どんな時でもわかったような顔をしている。他を落とし込めて優位に立ちたい人がいる。世間を気にしている。義務と服従が好きな人がいる。どうも、大人には、うんざりしているのが子供たちなのだ。

子供に文句をつけることはできるが、大人はどうしたらいいのかわからないでいる。
たしかに、今の子供たちを縛り付けている現状をどうかえていくのか。
子どもを自由にのびのびと生活させるために何をするのか。
わからないまま、今のやり方ではダメだといって、いるだけでは成り立たない。
「子ども」という不思議な存在を、大人の立場から論ずるのではなく、子どもの立場から、論ずることが必要なのである。

何事もほどほどに、バランスが大切。
私たちがこれまでがんばってきたのは、誰のためだと子供に説教をする大人。
服装の乱れは、心の乱れと訓示を垂れる大人。
「命令をきかない子」「みんなと一緒にやらない子」などとレッテルを貼る。

世の中はしていけないことが多くあって、していいことが少しある。
自分のしていることがしていいのかどうか、ちょっと子供は心配だという図式なのです。
子供を成長過程の人間であるとして、人格をきちんと認めるのが大人の作法なのです。
子供を未来の視点から、誉めてやることが一番大切なんだね。
子供の問題にしないで、子供のことを大人の問題にすることで、視野が広がる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教育
感想投稿日 : 2023年7月5日
読了日 : 2023年7月5日
本棚登録日 : 2023年7月5日

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