九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

  • 早川書房 (1976年7月1日発売)
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20世紀アメリカの推理小説家ハリイ・ケメルマン(1908-1996)の短篇集。

白眉はやはり表題作。まず思いつきの言葉だけが脈絡もなく与えられて、そこから推論の力だけで或る物語を導出し、最後にそれが現実と結びつけられていく。所与の状況に依存したやや強引な推論が見られるのも確かだが、論理性以外の要素を極力排して純化された無条件的な知的遊戯のこの展開の仕方がなんとも心地よい。

「たとえば十語ないし十二語からなるひとつの文章を作ってみたまえ・・・そうしたら、きみがその文章を考えたときにはまったく思いもかけなかった一連の論理的な推論を引きだしてお目にかけよう」

「序文」に書かれた本作品誕生までの経緯も面白い。なお、有名な文句「九マイルは遠すぎる、雨の中ならなおさらだ」の原文は、次の十一語からなる。「A nine mile walk is no joke, especially in the rain.」

名のみ知っていたこの作品を手に取ろうと思ったきっかけは、2019年7月10日の朝日新聞朝刊に掲載された四コマ漫画『ののちゃん』。作者のいしいひさいち氏に感謝。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アメリカ文学
感想投稿日 : 2019年7月15日
読了日 : 2019年7月15日
本棚登録日 : 2019年7月15日

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