九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (1976年7月30日発売)
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感想 : 197
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  • 本 ・本 (2ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150711023

感想・レビュー・書評

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  • 再読。短編集。昔々読んだ時は安楽椅子探偵というものに初めて触れ感嘆した思い出があるが、今回はニッキィ教授の推理はキレるがチェスの腕前はイマイチというキャラクター造形と、ホームズ・ワトソン的な物語の進行でそりゃ面白いでしょと再認識。

  • 一見不可解な状況に想像力の翼を広げ、思いもよらぬ解をもたらす英文学教授のニッキィ・ウェルトと元法学部教授で郡検事のわたしのコンビが贈る安楽椅子探偵もの。

    タイトルがキャッチーで気になってはいたけど、未読だった作品。
    『海外ミステリーマストリード100』より。

    探偵ものでよくある一目状況を見ただけで見透かしたように、あなたは今日〇〇でしたね?→え、なぜそれを!?→△△がこうなっている。普通ならああなるはずが、こうなっているということは〇〇だったからでしょう。もちろん××の考えもよぎりましたが、それならば□□にはならないでしょうからね。
    なんてやつに物語性を持たせ、周辺事情を書き込んだような感じ。

    表題作は、この手の話のあるあるな「状況」を起点とせず、「言葉」を起点としているところに強い独自性を感じる。
    「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」のワンセンテンスからどんな論理が導けるのか。。。

    短編なのでどうしてもダイナミックさや奥深さといったものはもう一声といったところなのだが、ニッキィとわたしが不可解事案を論理でこねくり回して料理する「型」の、羅列型漫才かのような連続性が小気味良かった。

  • 好きな小説紹介系YouTuberがレビューしており、しばらく前に購入。長らく本棚に眠っていたが、久しぶりに海外ミステリが読みたくなり積読消化することに。

    表題作『九マイルは遠すぎる』は究極のアームチェア・ディテクティブ作品と謳われるだけあり、探偵役のニコラス・ウェルト(ニッキィ教授)が友人との言葉遊びから素晴らしく鮮やかな推理を展開していく。少ないページ数で見事な推理描写を見せた作者のハリイ・ケメルマンのセンスに只々脱帽するばかり…。
    他に好きな作品を1つ挙げろと言われれば、『時計を二つ持つ男』だろうか。好奇心がそそられるタイトルだけでなく、伏線の張り方とその回収の仕方が実に秀逸で、ユーモアなオチも相まって素晴らしい読後感を味わえた。

    読みやすい連作短編形式かつ、殺人事件が絡むものの生々しい描写が少ないものポイントで、海外ミステリに挑戦してみたい人にはぜひ読んでほしい作品だった。
    本作の感想とはあまり関係ないかもしれないが、海外のミステリ作品はなぜこんなにも心躍るタイトルが名づけられるのだろうか。ついつい口に出してみたくなるような本の名前である…。

  • K図書館 1976年
    ニッキイ教授「10語ないし12語の文章から、論理的な推論を引き出してあげよう」
    わたし「 9マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となると なおさらだ」
    教授はある事件を暴き出した


    「9マイル」は16ページしかなく、すんなり読めた
    他は読みにくいので中断した

    教授の凄いところは、事件だけでなく、この9マイルの言葉自体はどこからきたのかということも見逃さなかった
    わたし「 あれはひょいと頭に浮かんできただけさ」
    教授「いやそんなはずはない」
    「特定の状況を示すものに違いない」
    わたしは思い出すと、それはブルームーンで2人連れが、何か夢中で話していた言葉だった
    ちょっとしたことだが、この部分も加えることによって、教授の鋭さを著していた

    何も知らない人に、9マイルのように推論ゲームすると楽しいのでおすすめだ
    ちなみに9マイル=14.4km

  • 面白かった!
    人狼ゲームを見るのが好きな私(やるのは難しいのですが!)にとって、言葉だけで得られる情報で論理的に犯人を導き出す作品がとても好きです。安楽椅子探偵と言ってもいいのでしょうか?
    私自身が推理をあまりのばせない人間なので、助手の立場が「これはどういうことだい?」と聞いて、頭のいい探偵が呆れながらも説明してくれるのも分かりやすくて良いのかもしれません。
    かなり好きな作品でした。

  • 表題作はものすごく面白くて3作目ぐらいまでは面白かったのに、その後の失速感がもったいない。失速ってよりも最初のインパクトの強烈さで3作目まで勢いで読めたぐらいの感じに思えた。
    単に私の今の気分が乗ってなかっただけかも知れないから再読したら意見変わりそう。

  • 表題作短編「九マイルは遠すぎる」は1947年に発表、中の最終作はそれから20年後。いずれにせよ、50年以上前の安楽椅子探偵ミステリ。
    その頃のアメリカの通信手段や移動手段等、推理の前提がわからないながらも、本格推理小説としてとても楽しめました。。
    ニューイングランド州の古き良き(かつて憧れた)アメリカが感じられて、それも良き。

  • transcendentalさんのレビューを読んで、
    https://booklog.jp/users/transcendental/archives/1/415071102X
    恥ずかしながら、まったく知らなかった作家・作品だったのだが、
    興味を持ち、購入。

    大学の英文学教授ニッキイことニコラス・ウェルトの名推理を、
    友人で、法学部教授を辞し、
    郡検事となった語り手の「私」が綴るシリーズ、全8編。
    表題作の原題は「The Nine Mile Walk」。
    推論について論じるニッキイと「私」。
    ニッキイは、単語10~12語で短文を捻り出せば、
    その内容から意外な論理的結実を引き出せると言う。
    「私」が何故か、ふと思い浮かんだワンフレーズ、

     A nine mile walk is no joke, especially in the rain.
     ――九マイルは遠すぎる、雨の中ならなおさらだ。

    を口にすると、ニッキイはそれを深堀りして、
    ある犯罪を暴き出した――。
    ごく短いセンテンスに複雑な意味が込められている場合もある、
    という話。
    行間を読むこと、頭の中でイメージを膨らませ、
    思考の筋道を通すことの重要性を再認。

    以下「屁理屈安楽椅子探偵」(笑)の活躍が描かれるのだが、
    初手のインパクトが強すぎて、
    他の7編はあまり頭に入らなかった(トホホ)が、
    論理にこだわる人たちがチェスを嗜むという辺りがリアル。
    殺人現場の写真を見て、
    チェス盤の状況から犯人と犯行の手口を言い当てる(「エンド・プレイ」)
    なんてカッコよすぎ。

    ちなみに、入手したのは新品で、
    2017年12月、17刷(初版は1976年7月)――
    ということは、コンスタントに需要があるのですね。

    カバーデザインがお洒落で、しかも、
    「The Nine Mile Walk」理解の一助に。

  • 20世紀アメリカの推理小説家ハリイ・ケメルマン(1908-1996)の短篇集。

    白眉はやはり表題作。まず思いつきの言葉だけが脈絡もなく与えられて、そこから推論の力だけで或る物語を導出し、最後にそれが現実と結びつけられていく。所与の状況に依存したやや強引な推論が見られるのも確かだが、論理性以外の要素を極力排して純化された無条件的な知的遊戯のこの展開の仕方がなんとも心地よい。

    「たとえば十語ないし十二語からなるひとつの文章を作ってみたまえ・・・そうしたら、きみがその文章を考えたときにはまったく思いもかけなかった一連の論理的な推論を引きだしてお目にかけよう」

    「序文」に書かれた本作品誕生までの経緯も面白い。なお、有名な文句「九マイルは遠すぎる、雨の中ならなおさらだ」の原文は、次の十一語からなる。「A nine mile walk is no joke, especially in the rain.」

    名のみ知っていたこの作品を手に取ろうと思ったきっかけは、2019年7月10日の朝日新聞朝刊に掲載された四コマ漫画『ののちゃん』。作者のいしいひさいち氏に感謝。

  • 「47年は遠すぎる」…なんてことは全然ありませんでした。この昭和51年初版のハヤカワ・ミステリ文庫を初めて読んだ時の晴れやかな気分が速攻でよみがえりました。まるで数式を解いたような爽快感を感じたあの日に一瞬でワープ。きっかけは「午後のチャイムが鳴るまでは」。主人公が『まるで「九マイルは遠すぎる」みたいだ』と口にしたのです。第4話「占いの館へおいで」の冒頭から、なんか、このモチーフ知ってるぞ…って感じていましたが、やはりハリイ・ケメルマンでした。実家から持って来た文庫本が詰まった段ボール箱を開けて、47年ぶりに発掘。高校生の自分、こういうミステリにハマっていました。今読んでもこんなに面白いのに、こういうジャンル読まなくなっちゃったのは、なんでだろ?自分にミステリを感じます。先ずは一緒にサルベージしたラビシリーズ、読んでみようかな?

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