ニッポンの思想 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2009年7月17日発売)
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本棚登録 : 972
感想 : 83
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1980年代からゼロ年代までの、日本の現代思想を分かりやすく整理した本です。

「ニュー・アカデミズム」と呼ばれた、浅田彰と中沢新一の活躍から説き起こし、理論的な補強をおこなった蓮實重彦と柄谷行人、90年代をリードした福田和也、大塚英志、宮台真司、そしてゼロ年代に「一人勝ち」を収めた東浩紀の仕事を総覧しています。

現代思想の担い手たちを、「思想市場」におけるパフォーマティヴな振舞いという面から、次々と主役が交代する一幕の劇のように描き出しており、たいへん分かりやすいのですが、同時にそうした現代思想という「場」に対するある程度の批評性も担保されているように思います。

著者は、思想と呼ばれる営みには世界を変革しようとするものと、世界を記述しようとするものがあると言い、初発の動機としては前者であったはずのものが、「現代思想」という場におけるパフォーマンスがくり返される中で、いつのまにか後者へとすり替わってしまったことを、「ニューアカの悲喜劇」と呼んでいます。そして、椹木野衣が「悪い場所」と名づけたような閉域として、あるいは福田和也が「虚妄としての日本」と呼んでアイロニカルに肯定して見せたような場所として、「ニッポンの思想」を理解し、やがてそれが東浩紀のデータベース消費論と呼応するような、徹底的にベタな「思想市場」というゲームの上での戯れに帰結したことを論じています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学・思想
感想投稿日 : 2014年5月25日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年5月25日

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