高校生の頃からずっと、外国作品では一番好きな、『夏への扉』。
尊敬するブクログ仲間さんが書かれた素晴らしいレビューに
「大好きな福島正実さん訳で読んでくださってありがとうございます♪」
なんてコメントして、ふと思ったのです。
そんなこと言っておきながら、私ったら新訳版を読んでいないじゃない。
『夏への扉』ファンとして、これはひょっとしてものすごく不公平な態度なのでは?!
ということで、読んでみました、新訳版。
読む前から、訳者さんのお名前になんだか見覚えがあるなぁと思っていたら
なんと、あの『アルジャーノンに花束を』を翻訳された小尾芙佐さんではありませんか。
新訳と銘打つのだから、もっとかなり若手の(小尾さん、ごめんなさい!)
訳者さんの手に委ねられたのだと思い込んでいました。
そんなわけで、福島版では「文化女中器」だった家事ロボットが
「おそうじガール」と、かなり軽やかなネーミングになっていたりするけれど
全体的には、ベテランの訳者さんらしい正統派の翻訳です。
福島さんを訪ねるところからSF翻訳者としてのキャリアが始まったという小尾さんの
福島訳への敬意が伝わってきて、胸が熱くなったりして。
でもでも、欲を言えば、翻訳ものに馴染みのない少年少女にも
コールド・スリープ中の資産運用や、ダンの発明品の部品の説明なんかが
すんなり理解できるような新訳版であったなら、もっとうれしい。
オススメの本を貸して、という生徒に喜び勇んで『夏への扉』を渡して
文章に馴染めない、説明が頭に入ってこないからゴメンナサイと
早々に返却されることが、今までどれほどあったことか。
この本に描かれた未来を10年以上飛び越えてしまった今だからこそ
ルンバもスイカも使いこなす若者たちが、すうっと作品世界に入り込めるような
しなやかな新訳版の誕生を待ち望んでしまいます。
だって、夏への扉を探し続けるピートとダンの勇姿を
ひとりでも多くの人に見てもらいたいではありませんか♪
- 感想投稿日 : 2013年4月13日
- 読了日 : 2013年4月10日
- 本棚登録日 : 2013年4月13日
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