鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

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感想 : 153
4

SFとミステリの融合。長セリフでの説明多い印象。ミステリは詳しくないが、そういうものなのかな?

とはいえセリフの内容は事件の謎解きそのものよりも、哲学的だったり政治的な解釈がけっこう多い。
地球上には宇宙人の居住区と地球人の居住区がドームで遮断されており宇宙に入植したかつての地球人は宇宙人と呼ばれている。人類がそれぞれ遮断された空間で、全く違う価値観に基づいて暮らしている。

そして、それを跨いだ殺(宇宙)人事件が起きる事により、互いの価値観の摩擦が起こり、政治的な陰謀が露わになる。

そういう点が1番の面白みであったと思う。

今の社会に置き換えて見ても、一つの国家が一枚岩でなく様々なイデオロギーや利害が複雑に絡み合っている点では共通しているし、何より時代が変わろうと変わらない人間という不確かな存在が中心にあるからこそ空想科学的小説は面白い。

楽しかったのが人間そっくりなロボットのダニールの人工知能的な思考回路を想像してみること。価値観の違いに振り回される。ラストにかけて楽しみが増した。

ついでに他の方も書いていたブロマンス的な部分はわたしは良かったと思う。強いのに従順、合理的すぎて融通効かないロボットのダニールと、くたびれ気味の刑事ベイリという水と油のコンビが、ときたま息が合う瞬間にはキュンとしてしまった。
続編は新訳で読みたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年3月23日
読了日 : 2022年3月22日
本棚登録日 : 2022年3月19日

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