本書はスカーフ問題に象徴されるヨーロッパの既存社会とムスリムとの間の軋轢を、ムスリム系移民擁護の姿勢から概説する。
1973年の石油危機以降困窮化したムスリムとそれに伴うイスラムコミュニティの創設。血統主義のドイツ、柱状社会のオランダ、ライシテのフランスで噴出する諸問題。これらの紹介と並行して逐次著者の意見が述べられていく。
当初、掴みを得るためか我々の同情を誘う記述が多く、単なる感情論なのではと思われる点がままあった。しかし、後半になるにつれて各国事情との照合に基づいた記述が増えてゆき、論理に肉付けがなされてゆく。
冒頭にも述べたとおり、決して本書は中立的な立場に乗っ取って書かれたものではないと思う。だが、ユーロセントリズムの陰に隠れて見えなかったヨーロッパのイスラムを知るにあたっては有益な書籍になるはずだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
外交・歴史
- 感想投稿日 : 2011年9月2日
- 読了日 : 2011年9月1日
- 本棚登録日 : 2011年9月1日
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