王妃マリーアントワネット(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社 (1985年3月27日発売)
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【後編4‐3 政治経済および思想の成熟期】
 フランス革命前夜からその顛末を、王妃マリー・アントワネットと娼婦マルグリッドの両方の視点から追いかける。カイン型人生観の一つの集大成として起こったのがフランス革命。人類の自由史において消すことの出来ない華々しい一ページを飾ったこの革命であるが、その背景にある人々の感情、時代の軋みを見つめると、その大輪の根が吸い上げるのは、時代において流されてた人々の涙と鮮血である。
 最高の栄華を極めたブルボン朝ルイ14世の時代から、急激に陰りを見せ始めたルイ16世の世が舞台である。フランスの第三階級は明日食うパンにも困窮し、空腹は憎悪に満たされ始める。人々は徒党を組みその血走った眼は国家の転覆を夢見る。ベルサイユ宮殿で金と権力と愛憎の茶番に没する王侯貴族にはそんなことは露知らず、王と王妃に至っては、自身が国民に愛されていると信じてやまない。国民の願いは王族が美しくいること、優雅でいること、それこそが自らの義務だと信じてやまない。
 そしてバスティーユ牢獄襲撃、革命の狼煙である。ベルサイユ宮殿を襲う黒い濁流。手に手に武器を持ち、聞かざる白い人々を打ちのめす。そしてギロチンが無機質に落下する。世界の自由はこのように奪取されたのだ。それだけは事実である。

 これを読むと、歴史とは人の生涯の集まりであるのだと、胸に刺さるような思いがよみがえる。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ:  ⑫‐3 思想の成熟期
感想投稿日 : 2013年10月12日
本棚登録日 : 2013年10月10日

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