毎年届く謎の花束。
差出人はイニシャル「K」
女性たちが紡ぐ、美しくも苦い物語。
読み進めていくにつれて、「もしや・・・」との思いが、「これは・・・」と確信に変わっていく。
ネタバレなしで感想を書こうと思うと、どこまで言及していいか少し悩むものの、タイトルの「花の鎖」というのはまさに絶妙だと思わざるを得ない、と言える。
鍵となるお店や花や人物などが散りばめられていて、それが確かに鎖のように繋がっていく。
構成が、とても美しい。
けれど、湊さんらしく、人間模様も丁寧に書かれていて苦い気持ちも漏れなくついてくる。
自分のルーツを知ることは、アイデンティティの確立にも繋がってくると思っている。
たとえどんな過去があろうと、知らない方がよかった、と目を背けるよりは私も知りたいと思うはず。けれど、なんだかやるせない。口にされなかった過去には、口にされないだけの理由があるのも事実なのでしょうね。
再読するとまた見えてくるものもあり、それでまた苦みを増すことにもなるのだけれど、本当に構成が巧みで素晴らしい作品でした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の小説
- 感想投稿日 : 2021年8月30日
- 読了日 : 2021年8月30日
- 本棚登録日 : 2021年8月30日
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