花の鎖

著者 :
  • 文藝春秋 (2011年3月8日発売)
3.55
  • (199)
  • (598)
  • (596)
  • (111)
  • (23)
本棚登録 : 3996
感想 : 627
4

毎年届く謎の花束。
差出人はイニシャル「K」
女性たちが紡ぐ、美しくも苦い物語。

読み進めていくにつれて、「もしや・・・」との思いが、「これは・・・」と確信に変わっていく。
ネタバレなしで感想を書こうと思うと、どこまで言及していいか少し悩むものの、タイトルの「花の鎖」というのはまさに絶妙だと思わざるを得ない、と言える。

鍵となるお店や花や人物などが散りばめられていて、それが確かに鎖のように繋がっていく。
構成が、とても美しい。
けれど、湊さんらしく、人間模様も丁寧に書かれていて苦い気持ちも漏れなくついてくる。

自分のルーツを知ることは、アイデンティティの確立にも繋がってくると思っている。
たとえどんな過去があろうと、知らない方がよかった、と目を背けるよりは私も知りたいと思うはず。けれど、なんだかやるせない。口にされなかった過去には、口にされないだけの理由があるのも事実なのでしょうね。

再読するとまた見えてくるものもあり、それでまた苦みを増すことにもなるのだけれど、本当に構成が巧みで素晴らしい作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の小説
感想投稿日 : 2021年8月30日
読了日 : 2021年8月30日
本棚登録日 : 2021年8月30日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする