「風葬の教室」は、おそらく私が今のところ人生で一番好きな短編であり、再読をあまりしない自分が唯一何度も何度も読み返している一編。
杏は「軽蔑」という、自分をいじめた者を殺す方法を見出し、自分の中で、相手を人間にも足らない動物に貶め、じわじわ殺していく。
そして自分の中の墓地に殺した者を風葬していく。
殺した者に土さえもかけず、野ざらしにしておく風葬という葬り方を選ぶところも面白い。
これによって、いつでも殺人を犯せる能力を手に入れた杏は、同時に強さも手に入れる。
自分なりの対処法を見つけて考え方を一変することで、自分なりの生き方を見つけることは、あらゆる場面で自分を助けてくれる一種の救済法だろう。
しかし、それらを包む滑らかな文体、どこか色気の漂う世界観、これが何度読んでも、読むたびに震える。
作品の解説をされていた吉本由美さんの言葉にとても共感を覚えたため一部借りると、山田詠美さんの作品は、普通の人では無意識のうちに感じて、気に留めず通りすぎてしまうような細かな感情、それらをクローズアップして魅惑的な世界が作り上げられている。山田詠美さんの作るその魅惑的な世界がとても好きだ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年12月13日
- 読了日 : 2020年6月19日
- 本棚登録日 : 2021年1月28日
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コメント 1件
workmaさんのコメント
2023/03/21