西洋絵画の背景にごく当たり前に控えるキリスト教。この世界宗教は、日本人にはわかりづらいところがある。そこで、絵画の背景を読み解いてきた著者が、日本人の西洋絵画理解の難敵キリスト教、特にその神の子とされるイエスを解説する。
とまぁ、そんな一冊でした。
中野京子さんの著作は今回が初めてです。
平易にイエスの一生を辿っていてわかりやすい内容でした。
読みながら遠藤周作みたいだなぁと思っていたら巻末に主要文献としてまっさきに挙げられていたのが遠藤周作「イエスの生涯」で、ですよねー、と納得。
ただ個人的には遠藤周作の「イエスの生涯」には思い入れがあるのでちょっと複雑。
「イエスの生涯」って、日本人であると同時に基督者である遠藤周作が、彼の信仰と、そして信じながらも信じきれないという、その葛藤のなかで決死の思いで辿りついた彼の「祈り」の吐露だと思うのですよ。なので、あとがきで開口一番「わたしはクリスチャンではありません」とあっさり断言できるかたが、あれをまるで史実のように、聖書の一般的な解釈のように読んで、そしてまたまるで事実かのように、種明かしかのように語って聞かせていることにものすごい違和感を覚えました。
もちろん挙げられている文献は「イエスの生涯」だけではなく、総合的に読んだうえでその着地点だったのだとは思いますが…(「ふしぎなキリスト教」も挙がっていて、こちらも「ですよね、わかる」となりました)。
全体としてはとても楽しい読書でした。
もう少し絵画の具体的な見どころ説明が入っていたらよかったな~と思いながらも、今回は絵画の解説ではなく、絵画の背景に流れるキリスト教の世界観の解説ということなので、絵画の解説は著者の別の著作に期待します。
(巻末の末盛氏の解説、もうちょっとこう…もうちょっとこう! とむずむずしました)
- 感想投稿日 : 2020年9月7日
- 読了日 : 2020年9月6日
- 本棚登録日 : 2020年9月7日
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