人はどこまで合理的か 下

  • 草思社 (2022年7月12日発売)
3.71
  • (12)
  • (21)
  • (22)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 473
感想 : 30
5

著者は、「信じなければいけないものとされるものは一切信じない」と断言する。人間の客観的な幸福を示す多くの指標は、時系列的にプロットすると満足のいく増加傾向を示すが、それは何かの力や弁証法や進化法則が人類をよいほうへ押し上げているからではない、と表明している。そして、以下の一文には単なる共感を超え、感動すら覚える。
「「進歩」とは、この容赦のない宇宙のなかで、人類がかろうじて示すことのできた抵抗と、無理やりもぎ取った勝利の総体を指す略語であり、説明を要する一現象のことである。そしてその進歩を説明できるものが合理性である。人類の福祉を向上させるという目標を掲げ(栄光や贖罪といった疑わしいものを追い求めるのではなく)、自分たちの創意工夫を制度にして他の人々と共有できるようにしたとき、時折、人間は成功する。そしてその成功を維持し、失敗を防ぐことができたとき、時折、利得が蓄積される。この全体像を「進歩」と呼ぶ。」
この進歩を説明するための合理性ツールについて、いくつか紹介してくれる。論理学、確率、ベイズ推論、ゲーム理論、相関と因果など。いくつかの領域は、本書を読むだけでは十分に理解が及ばないものも含まれる。しかし、このようなツールがあることを理解し、ある程度でも踏まえて生活することが個人的にも社会的にも肝要であることを改めて認識させられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年12月18日
読了日 : 2022年12月17日
本棚登録日 : 2022年9月18日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする