「特攻」と日本人 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2005年7月20日発売)
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感想 : 19

なぜ国を挙げてあの凶器に満ちた作戦に進んでいったのか。筆者は指導者が、そして大日本帝国臣民が目標を無くして迷走していったことをその大きな理由とする。そして出征していった学徒兵が遺した手記には当時の軍司令部と臣民に対する怨嗟が読み取れないものはひとつとしてない、という。

著者は今まで手記を読んで涙を流さなかったことがなかったというだけあって、いささか感情的に過ぎるきらいはあるが、若者たちが犠牲者であり、自分たちもすぐあとに続くと言って彼らを送り出した司令官たちは戦後自らの行動を恥じ入るどころか、若者たちの行動がいかに自発的であったか、とすることに汲汲としていたという事実。そもそも軍は特攻のために専用の航空機や潜水艇まで作っていたというのに。しかしこれを未だに「美しい物語」として消費し続ける我々の罪も、また彼らと大差ない。

彼らがいたから今の日本の繁栄がある、という言葉は何度も聞いてきたが、かれらはあの時代に生まれてしまったばかりに目標を失った軍の指導者、保身に夢中になった司令官たちそしてそれを黙認した臣民たちに将来を断たれたのだ。それは歴史的事実だ。だから「そのときはそうするしかなかった」というなら、今後は決してそうならないように自壊すべきだろう。

イスラム教徒の自爆テロや、それがまるで理解を超えた別の世界の出来事のように語られることに強い違和感を覚える。わずか70年前、それを美徳とすることが明らかに支配的だった時代があり、今もそれは私たちの底の方に流れている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年12月26日
読了日 : 2014年12月26日
本棚登録日 : 2014年12月26日

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