久々のアンナ・カヴァンは自伝的要素の強い比較的初期の長編で、連作短編としても読める。説明するのが難しいけれど、これはタイトル通り「眠りの館」で見られた「夢」の連作。
一応「夢」の前に、現実の状況の説明書きのようなものが入る。そのような時期にこのような夢を見た、というような形式と解釈したけれど、それで合ってるかどうかはわからない。彼女が「昼」と呼ぶ現実世界に、彼女はなじめない。夜の言葉で紡がれた夢の世界だけが彼女の居場所。
夢の中では、映画のようにカメラワークが意識されておりディテールがとても細かく、金井美恵子を読んでいるかのよう。主人公は少女時代の自分を遠くから眺めているように「B」と呼び、母親を「A」と呼ぶ。夢だから視点が俯瞰なのだろう。不条理なことが起こり、なにかを象徴しているようないないようなことが起こる。それらすべての言葉のチョイスや表現がとにかく美しい。これは翻訳者の力もあるかもしれない。
序盤のほうで、主人公の家には「日本人のハウスボーイ」がおり、彼がおとぎ話などを聞かせてくれる。その影響で彼女の夢に「プリンス・ゲンジ」が登場したりもする。アンナ・カヴァンはウェイリー版の源氏物語を読んでいたようだ。私も早く読まなくちゃ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
★イギリス・アイルランド
- 感想投稿日 : 2024年4月30日
- 読了日 : 2024年4月25日
- 本棚登録日 : 2024年4月15日
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コメント 2件
淳水堂さんのコメント
2024/05/01
yamaitsuさんのコメント
2024/05/01