突然ノックの音が (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社 (2015年2月27日発売)
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本棚登録 : 399
感想 : 39

38の短編からなる作品。期待して読みはじめたのだが、ちっとも面白くない。結局、面白く読んだのは「金魚」と「痔」「どんな動物?」の3つだけだった。
海外作品の短編は難しい。
短編が短くても成り立つのは、書き手と読み手が共有している何か、例えば習慣とか価値観とか、文化とか歴史とか、そういうものを、指し示すだけで「ああ、アレのことね、言わなくてもわかる」と通じるから。書かれていなくても通じる何かを共有していないと、思わせぶりなだけでよくわからない、単語や文のレベルでは理解できるのに全体として何が書いてあるのかわからない文章になる。
短編は、特にショートショートのようなものは、短ければ短いほどわかった時の感動は大きい。思わずニヤリとして、これが書ける作者ってセンスいい、それに、それを分かる私もセンスいい、ってなる。反対に、分からないとみじめだ。
この『突然ノックの音が』は後者だった。
先進国に共通の生活様式など、目に見える風俗は分かる。だけど、解説してもらわないとわからないジョークを解説なしで聞いている時の居心地の悪さが消えない。

面白かった3作品について。(ネタバレあり)

「金魚」 あるビデオジャーナリストが、すごくいいことを思いついた。もし金魚があなたの願いをなんでもかなえてくれるとしたら何を願いますか?って、いろんな人にインタビューして集める、というもの。何たる偶然、そして悲劇。インタビューを受けた一人は、本当に願いをかなえてくれる金魚を飼っていて、ただし、残り一つになっている状況だった。その金魚のことがバレと勘違いしてジャーナリストを殺してしまう。最後の願いを使って生き返らせることもできる。さて。

「痔」 ある男が痔を患った。痛みが気になるので痔に耳を傾けていたところ思慮深くなり成功する。反転。ある痔が人間を患った。人間に耳を傾けたところ成功した。

「どんな動物?」 4才の息子のごっこ遊びにつきあえない妻とつきあえる娼婦。世の中には誰かの期待に応えて演じる、ということができる人とできない人がいて、、、という話しをテレビの取材で演じながら書く私。

この3編は私にもニヤリポイントがわかった。わかったのでとても楽しめた。偶然なのか必然なのか、3つともループ構造(入れ子構造)の物語だった。
他の35作品はわからなかった。
わかる人にはとても面白い小説なんだろうなぁ。

あと、著者が映像作家でもあると聞いて納得。シーンの描写が映像的(映画的)。文字で書かれた作品ではあるけれど、カメラワークを感じる描写スタイルで、それが著者の人気の秘密なのかもしれないけれど、私は読み方を指示されているようで窮屈に感じられた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年4月8日
読了日 : 2015年4月7日
本棚登録日 : 2015年4月7日

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