下巻は結論から絞っていく
なぜヨーロッパ人ひいてはユーラシア大陸の人類が征服者となり、主導権を握れたのか
ポイントは4つ
①栽培化や家畜化の候補となりうる動植物種の分布状況が大陸により異なっていた
ユーラシア大陸は家畜化や栽培可能な野生動植物が多様で、食料生産をより効率的におこなうことができた
食糧生産の実践が余剰作物の貯蓄を可能にした
つまりその余剰が非生産者階級の専門職を養うゆとりを生み出し、大規模集団の形成を可能とし、技術面、政治面、軍事面で有利となった
また家畜化できる動物が多かったため、人や荷物を運ぶ運搬する手段、さらには他地域へ侵略する際の戦闘用にも役立った
②伝播や拡散の速度
東西方向に伸びるユーラシアの陸塊が有利に
生体環境や地形上の障壁が他の大陸より少ない
アフリカ大陸や南北アメリカ大陸は南北方向のため、障壁が大きい
(例:南北アメリカ大陸→アマゾン川、砂漠、ジャングルにより地理的に分断)
③異なる大陸間での伝播の影響
地理的に孤立している大陸は不利
ユーラシア大陸から遠い、南北アメリカやオーストラリアなど
④大陸の大きさと総人口の違い
面積の大きな大陸や人口の多い大陸では、何かを発明する人間の数、競合する社会の数、利用可能な技術…などが相対的に多い
(ユーラシア大陸は社会の人口密度が高く、労働の分化や専門化が進んだ)
一部重複するが、他にも下記要因がある
・ユーラシア大陸は、定住生活が比較的早くからはじまった
・ユーラシア大陸は家畜化できる動物が他の大陸より多かったため、動物のかかる感染症が変化して人間がかかるようになった
しかしながらそのおかげで病気に対する免疫や遺伝性の抵抗力が(他の大陸より早く)自然に出来上がっていた
・特定の宗教を国教と定め、政教の結びつきを利用して征服戦争を正当化し政治的複合体を形成できた
・ユーラシア大陸は多くの国家で読み書きできる官僚がいた
理由としては、食糧生産とともに文字は発達した(納税の記録や、国王の布告、さらに文字は交易を通じて広がった)
そのため食糧生産が早くからさかんなユーラシア大陸は文字の伝播も早かった
そして下巻の中で一番気になったのが
ユーラシア大陸と似たような恵まれた条件の中国がなぜ主導権を握れなかったのか
東西方向に比較的ゆるやかな地形が続く中国
異なる地域を結ぶのに黄河と揚子江の水系が利用され、文化的及び政治的に統一されやすかった
食糧生産も早い時期に始まり、地形や環境の変化に富み、多様な作物や家畜や技術が誕生している
世界最多の人口を誇り、広大な土地を有している
著者の意見として、中国は国全体が政治的に統一されている このことがかえって裏目に出たという
何かを取りやめると国全体の流れが変わる…
そのため技術や文化が後退しやすい
そして比較的孤立している
この辺りはかなり興味深いのだが、いまいち納得のいく結論がなかったため、もう少し掘り下げて今後の個人的なテーマとしていきたい
結局のところ人類の能力などに差があるのではなく環境の差でしかないのだ
たまたま運よくユーラシア大陸に居たヨーロッパ人が恵まれていたがために傍若無人な振る舞いをし、
先住民を絶滅に追いやり世界を牛耳ることになったのだ
知れば知るほどこの理不尽さになんともやりきれない気持ちになってしまう
もっと身近なところにもたくさんある
恵まれた環境の人たちと、そうではない人たち…
あああ、何とも虚しい(嘆いたところで何も変わらないのだが…)
上下巻ようやく読み終えることができた
決して読みにくいこともわかりにくいこともないのだが、結論までがとてもとても丁寧で(笑)…
読む時間がなかなか取れない身としては、いったい何の話だったか都度都度テーマを確認しないと迷子になる
もちろんトピックによっては実に興味深いものもあったのは事実
面白かったのか微妙であるが一時間度は読んでみたかったのでおおむね満足である
- 感想投稿日 : 2022年9月28日
- 読了日 : 2022年9月28日
- 本棚登録日 : 2022年9月28日
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